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「Y・O・Iパロ」SS第四弾「Winter Llie」05

Category : 【4】Winter Llie
夏休みにあった事は律から聞いている。
皆の家で夜遅くまで、時にはオールナイトで遊んでいた事。
後輩の女の子を守るために、男の子と喧嘩をして怪我をした事。

夏休みが終わる少し前。
私は一度その事で、嘘を吐いてごまかそうとした律と喧嘩なった。
だけどすぐに律が謝りに来て、ちゃんと全部話してくれた。
それで一応その事は解決していた。でも…。

律が男の子に告白されていた。

それは聞いていなかった。
もちろん律が私になんでもかんでも話をしなくてはいけない、なんて決まりなどないけれど。
それは夏に律と喧嘩しそうになった件とは、全然別問題だ。
別にその事を話さなかったからといって、何がどう悪いという訳じゃないし。
音楽室に向かう階段を登りながら、私はそう理解していた。
でも頭で理解できても、心のどこかはまったく納得していなかった。

「澪ちゃん…」
無言で浮かない顔をする私にムギが心配したように声を掛けてくれた。
「ん?な、何、ムギ?」
「いえ…」
ムギの気遣いに申し訳ないとは思うのだけど、今は何を話していいのかわからなかった。

ムギと二人で部室に入ると、すでに梓が来ていた。
「こんにちわ、ムギ先輩、澪先輩」
「こんにちわ。梓ちゃん」
「澪先輩?」
考え事をしていた私は、部で唯一の後輩に挨拶を返すのも忘れて無言になっていた。
そんな私に梓が不思議そうに声を掛けてきたけれど、今は何も答えることができない。
ああ、これはちょっと無理だ…。

「…ごめん、ムギ、梓。今日はなんだか体調が悪いから帰る」
「え?」
「澪先輩?」
二人の声に何も答えず、私はソファに置いてあった鞄を肩に掛け、そのまま音楽室のドアを開けて部屋を出て行った。

あ、エリザベス…。
部室にベースを置いてきてしまった事に気付いたのは、学校を出る直前。
だけど私は結局取りに戻そうとはせず、そのまま門をくぐってしまった。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

「Y・O・Iパロ」SS第四弾「Winter Llie」04

Category : 【4】Winter Llie
律を好きな人。律に告白をした人。

「本人に聞くのが一番だってのはわかってるんだけど」
「なーんか律ちゃんて案外こういうのごまかしそう」
「だからムギちゃんにも聞いてたんだけど。知らないって」
「ええ…」
ムギがちょっと困ったように答える。

「ね、だから秋山さんなら知ってるかなって思って」
「一番仲いいじゃん、律ちゃんと」

- でもまあもし知っていたとしても、あんまり友達のプライバシーを喋るのはよくないか。
- さっきあっさり人の彼氏の事ばらしたあんたがいまさら…。
- 嬉しいくせにー。このこの。

じゃれあっている三人の声を聞きながら、私は顔を俯かせていた。
耳では彼女のたちの話す内容をちゃんと聞いていた。
けれど、私は頭の中ではまったく別の事を考えていた。

「秋山さん?」
「あ」
名前を呼ばれて、私は慌てて顔を上げる。
「ごめんね。やっぱりこういうのは本人に聞かないと、だよねー」
「う、うん。ごめん、私も…知らないから」
「そうなんだー。うーん、もうこれはやっぱり直接聞くしかないか!」
「最初からそうすれば良かったんだよー」
「一応聞いてみようかって言ったのどこのどいつだ」
三人が「じゃあ、どう話を切り出す」などと話あっているのが聞こえる中、私はまた顔を俯かせた。

「澪ちゃん、部室に行きましょう」
「あ、うん」
ムギが鞄を持って三人に挨拶する。
「ごめんねー、いろいろ聞いちゃって」
「うん。じゃあ、私たち部活に行くから」
ムギがそう言うと「頑張ってー」と手を振る三人に背を向けて私達は教室を出た。

しばらく二人とも無言で廊下を歩く。
「ちょっと驚いちゃったね」
「…そうだな」
どこか機械的に私はそれだけ言うと、また口を閉じた。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

「Y・O・Iパロ」SS第四弾「Winter Llie」03

Category : 【4】Winter Llie
「…い、いいけど。どうして?」
「秋山さんなら知ってるかなーと思ってさー。あのね…」
彼女たちは夏休み中街で偶然会った律と、律と一緒にいた中学時代の友人グループと仲良くなり、そのまま合流して一緒に遊んでいたそうだ。

今年の夏休み。
律は友人達の誘いに乗って、遊び回っていた時期があった。

「聞いてやってよー、さっきムギちゃんにも言ったけどー。この子そん時知り合った男子校の子とお付き合いすることになってー」
「ぎゃー!何、あっさりまたばらしてんの!」
自分の恋愛事情をばらされて、ちょっと紅くなりながら友達に文句を言う女の子。
「いいじゃん。あんたが頼まれたんでしょう、彼氏にー」
「そ、そうだけどさー」
「彼氏」の部分を強調されて、その子はちょっと照れていた。

律と一緒に遊んでいた子は、最初は中学時代の女友達ばかりだった。
だけどだんだんと友達の友達は皆友達…みたいな感じで増えていき、女子ばかりではなく男子も参加していった事は前に律から聞いていた。
「で、この子の彼氏の友達で、あ、同じ男子校の子ね。その子がさ、夏に皆で遊んでた時、律ちゃんに告白したんだってー」

告白?

「なんか軽いノリだったって聞いたけどね」
「うん。で同じように軽いノリで断られたって言ってたらしいけど」
「なんじゃ、そりゃ」
楽しそうに話す三人の女の子たち。
でも私の耳にはその子たちの笑い声も、どこか遠い所から聞こえてくる感じだった。
私は何も言わずただ黙っていた。

「澪ちゃん」
少し呆然としている私にムギが声を掛けてきた。
「あ、そ、それで…」
胸の中が妙にざわめく中、私は結局彼女達何が聞きたいのだろうと思った。
「あ、ごめんね。で、その場では断られた訳だけど」
ちょっとそのノリが軽かったかなーって反省してたんだって、その男の子は。
あ、つまりこの子の彼氏の友達ね。で…。

彼女の話を要約すると、律に告白したその男の子はまだあきらめていない様子。
それに気付いた彼女の彼氏は、友人の為自分の彼女にその子に(つまり律のことだ)今、彼氏や好きな子がいないかどうかそれとなく聞いてやってくれないか、と頼まれたのだそうだ。

「友達思いな彼氏じゃん」
「そ、そーかなー」
「照れるな、照れるな」
一人が冷やかすようにそう言うと、その子はちょっと顔を紅くした。
そんな三人の様子なんか私には見えているけれど、見ていなかった。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

「Y・O・Iパロ」SS第四弾「Winter Llie」02

Category : 【4】Winter Llie
「ううん、大したことじゃないと思うの」
それより澪ちゃん、私達は先に部室に行きましょう。
そう言って澪の腕を取るムギはなぜか少し焦っているようだった。

「う、うん」
ムギの様子をちょっと不思議に思いながらも二人で教室を出ようとした時、さっきまでムギと話をしていた子の一人が不意に声をあげた。
「あ、秋山さんなら知ってるんじゃない?」
「そうだねー、聞いてみよっか」
え、私?
急に自分の名前が出てきたことに驚いて、私は思わず振りかえってしまった。

「ねえ、秋山さん。ちょっとだけいい?」
「え、うん。いいけど、何?」
ニ組の教室に残っていた三人と私はほとんど面識がない。
違うクラスだから当然といえば当然だけど。
それなのに私が何を知っているというのだろう?

「あのね、律ちゃんの事だけど」
「律?」
チラッとムギの方を見る。ムギはなぜかさっきから落ち着かない様子だ。
「律がどうかした?」
「うん、あのね、律ちゃんって、今付き合ってる人とかいるのかな?」
「え…?」
突然の予想外の質問に、私は一瞬言葉を失う。

「知ってる?…秋山さん?」
しばらく呆然としてしまった私は、名前を呼ばれてハッとなった。
「あ、…さあ、いないと思うけど」
「そっかー。うーん、やっぱそうかな」
まあ、それは前に本人も言ってたしねー。でもあれだいぶ前じゃん。
三人はあれこれと何かを喋っている。

「ど、どうして」
「あー、じゃあー、好きな人いるとか言ってなかった?」
「…」
どうして彼女達はそんな事を聞くんだろう。
「あー、そんなあからさまに聞いてもさー。ごめん、秋山さん」
一人の子がそう言うと、他の二人も「ま、そうだねー」とかなんとか言いあっていた。

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ジャンル : 小説・文学

「Y・O・Iパロ」SS第四弾「Winter Llie」01

Category : 【4】Winter Llie
一度吐いた嘘は積み重なっていく。

ある事を繕おうとしてまた積み重ねるそれは、足し算ではなく掛け算。
自分が思っている以上にどんどん膨らんでいくものなんだと思う。

それでも彼女の嘘は優しい。
私を傷つけないように隠す嘘は、とても繊細で儚く綺麗だとすら思う。
でも私は、…私はなんだか悲しい。

***

ドアを開けると同時に、簡単な挨拶をして入った部室には誰もいなかった。

「私が一番乗りなんて珍しい」
そう呟いてからベースを部屋の隅に静かに置き、鞄はいつものソファの上に置く。
いつもの席に座ろうと思って…何となく止める。
誰かを待つよりは、ちょっとこちらから迎えに行ってみよう。
なぜか今日はそんな気分になった。

音楽室を出てニ年ニ組の教室に向かう。まだHRをしているという事はないだろうから、他の皆は何か用事でもあって部室にくるのが遅れているのだと思うけど。まだ教室にいるだろうか?
ニ組の教室のドアから少しだけ覗いてみるとムギが居た。
教室には他にも数人居て、ムギは残っている子達と何か話をしているようだった。

「ムギ」
「あ、澪ちゃん」
ムギの名前を呼び教室に入る。ムギと話をしていた子達が一斉に私を見た。
「…あ、ごめん、話の途中に」
皆の視線を浴びた私は、ちょっと気後れしながら軽く謝った。
「別にいいよー。秋山さん」
席に座って話している三人の女の子たちはさして気にしてないようで、私にひらひらと手を振って笑ってくれた。

「澪ちゃん、どうしたの?」
ムギは私に近づてくる。その顔はいつもの穏やかな笑顔ではあったけれど、どこか少し困っているようにも見えた。
「部室に行ったら誰もいないから。ちょっと見にきたんだ」
「そう、ありがとう」
「律や唯は?」
二人の姿が見えないのでムギに聞いてみると、ちょっと先生に呼ばれている…とのこと。

「まーた、なにかしたのか、あの二人」
ちょっと苦笑しながらも、反射的に私はそう思ってしまった。

テーマ : 二次創作:小説
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書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
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ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

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