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追憶の紋章 【13】 王都脱出 -08-

Category : 追憶の紋章【13】
正門を抜けるとリツは一度馬首を翻し、後ろを振り返った。
「伯爵…」
「全てはお前の努力の結果じゃ。なんら恥じることはない」
そう話す伯爵の声は、とても穏やかだった。

「王はドラゴンを倒した者には、思いのままの恩賞を与えると約束した。なのにお前が願いを言う前に…ドラゴンを倒した者の願いを聞く前に、姫の縁談を勝手に決めるなど間違っておるわ」
話ながら、チラリと伯爵は前に目を向けた。
王宮内から、またたくさんの馬蹄が聞こえてくる。
「もう話などしている時間はない、これを持って早く行け」
伯爵がホイっと掛け声を一つ上げながら、こちらに放り投げられたのは小さな革の袋。
たぶん中にはお金が入っているのだろう。

「さあてと」
リツに革袋を投げると、すぐに伯爵は私たちに背を向けた。
門の周辺には、私たちを捕らえようとする騎士や兵士たちと、反対に私たちを逃がそうとする騎士や兵士たちが、剣や槍を持って争っていた。
伯爵はそんな周囲の様子を馬車の上から見ると、ワハハとまた笑い出した。
「身分違いの二人の仲を応援せんとする、馬鹿なロマンティストの勇者たちよ!」
ここまで来たらとことんロマンを極めようぞ!濃と一緒にこの門を死守するのじゃ!
そしてこれも年齢を感じさせない、大きなよく響き渡る声で高らかにそう言い放った。

オー!!
伯爵の朗々とした声に応えた近衛騎士や兵士は、それぞれ剣や槍を持ち盾を持って集まり門前を固めた。門前に集結したのはただの騎士や兵士じゃない、恐ろしいドラゴンにもけっして怯まず戦い勝利を物にした真の勇者たちだ。
そんな彼らと戦うのを、一般の兵士たちがためらうのも無理はない。
じりじりと睨み合う両陣営。

「…さあ、もう行け」
そんな膠着した状況の中、剣を持ち甲冑を着込んだ伯爵の表情は、子供のように楽しそうだった。ただリツを見つめるその瞳は、とても優しく穏やかで、まるで実の娘を見ているような…そんな風に私には見えた。

伯爵や門前を固めて戦う彼らの行動に、少し呆然となっていたリツだったけれど。
「…お世話になりました」
伯爵に向けて一度頭深く下げ、短くそう言ったリツの声は少し震えていた。
「行くわよ」
神官騎士のサワコさんの声を聞いて、リツは馬首をまた翻した。
後ろから戦う兵士たちの猛る声を遠くに聞きながら、リツは必死に馬を走らせる。
私はリツの背中に手を回し、彼女の胸に頬を寄せながらほんの少しだけ、どんどん遠くなっていく王宮を振り返った。

王女と判明した後、有無をも言わさず連れてこられ「これからはこの国の姫として生きよ」と、初めて会った父にそう言われてからこの年になるまで私が過した城。
辛いことばかりだったような気もするけれど。
ムギと出会えたりことや、弟が出来たことは嬉しかった。
父も…あの人はあの人なりに、私のことを考えてくれてはいたのだと思う、でも…。

「さようなら」
私は少しずつ遠くなっていく城を見ながら一言そう呟くと、またリツの体にギュとしがみついた。
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