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追憶の紋章 【11】 王女の苦悩と騎士の決断 -05-

Category : 追憶の紋章【11】
討伐軍が王都を発ってからずっと。
不安で心配で、そして一日も早く会いたいと願っていたその人が今、私の目の前に居るのに。
本当の気持ちを隠して、こんな白々しい会話をしなくてはいけないことに、私はひどく悲しい気持ちになっていった。せめてもう少し、もう少し彼女の近くに行きたい。

「リツ様」
「は、はい」
「良ければ私と一曲踊りませんか」
「へ?あ、いや、私はダンスとかはちょっと…」
私の部屋で二人きりで会っているときでも、いつもはどこか冷静な雰囲気を崩さない彼女なのに。ダンスのお誘いを受けて慌ているリツを見ていると、私はほんの少しだけ悲しい気持ちが消えていくような気がした。

「大丈夫です。私が教えてさしあげます」
「いや、でも…」
まだ少し躊躇していたリツの背中を、ムギが軽く私の方へと押してくれた。
「ちょ」
「さあ」
押された彼女の手を取って、私はにっこりと微笑む。
「…では、僭越ながらお相手させて頂きます」
リツは観念したように、私の手をそっと手に取った。
二人して会場の中央に出ると、音楽隊の曲も変わった。
王女である私とドラゴンから街を救った英雄との組み合わせは、周囲から好意的に見られているようで、私とリツは拍手で迎えられた。

リツの手をとりながら、私はチラリと従兄弟殿を見てみた。
彼は苦虫潰したような顔をしながら、忌々しそうにこちらを見ていた。
私は別の意味で、また内心おかしくなってきたけれど、なんとか表情には出さずにすんだ。
「大丈夫、ゆっくりでいいから」
ぎこちない動きで踊るリツの耳元で、私は囁くようにそう言った。
お手柔らかに…、と言ったリツは本当にダンスは苦手なようで、足元ばかりを見ている。
私は出来る限り彼女に密着しながら、ダンスを踊る。

貴族の令嬢たちがリツを狙っていたことを話すと、リツは「別に…」と気にしていなかったような感じで答えた。リツのその答えに満足しながら、彼女が無事にここへ戻ってきてくれた事に、私は心から神に感謝した。討伐軍が王都を離れている間、私はずっと祈っていた。
彼女が無事に帰って来てくれる事を。

リツの上手とはいえないダンスにあわせながら、密着している彼女の体の温かさを私は全身で感じていた。彼女は帰ってきてくれた。無事に、私の元に。
本当ならダンスなんて口実はいらない。
広間に入ってリツに姿を見たら、本当はすぐにでも側に駆け寄っていきたかった。

「いいよ…」
リツは私の気持ちを全て知っているかのように、穏やかな口調でそう言うと、私の背中をそっと撫でてくれた。
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ジャンル : 小説・文学

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