スポンサーサイト

Category : スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

追憶の紋章 【9】 王との対話 -03-

Category : 追憶の紋章【9】
「き、貴様!王女殿下の御名を呼び捨てにするとは!」
とうとう武官の一人が私の側に来て、肩を掴んで立たせようとする。
急に負傷した部分の肩を掴まれ、私は一瞬顔をしかめた。
「…全員一旦下がれ」
ざわめく部屋の中で、王の声がすっと通って聞こえてきた。

赤枝の騎士以外の者は、部屋を出て行くように。

「陛下、それは…」
「構わぬ」
まだ肩を掴む武官を、王は目で放す様に命じた。武官は小さな唸り声をあげながらも、私から手を離す。王がここから出るようにと、手を軽く振って周囲を促す。
謁見の間に居た武官、文官を全員部屋の外へと出ていった。
部屋に残っているのは王と、私の二人だけとなった。

王は玉座から立ち上がり、無言でバルコニーの方へ歩き出した。
目で付いてくるように促す王の後を、私も黙ってついていく。バルコニーの先に見えるのは広い庭園と、さらにその先にある大きな門。
いつも何か式典がある際は、ここから王は国民に顔を見せ手を振る。
…子供の頃、どうにかこの門の奥にある王宮に入ることは出来ないかと考えていた。
今、私はずっと入りたいと願っていた場所に、王と二人で立っている。
その事実が、私の内心に妙な非現実感を漂わせる。

バルコニーに出てみると吹く風は少し冷たかった。もう季節は冬も近い。
「…お前は、あの施設にいた者だな」
突然王は口を開いたかと思うと、私が思いもしなかった質問をしされる。
「…そうです」
一瞬躊躇したものの、私は正直にそう答える。
王は少しだけ私の方に目を向け、僅かに苦々しそうな表情を受かベた。
だがすぐに視線を私から前に戻し、顔を数度横に振ると一つ息を吐く。
「先程のお前の話だが」
「はい…」
「父である余より、お前の方が我が娘の望みとやらがわかるというのか」
王にそう聞かれた瞬間、私の頭の中に施設での生活が鮮やかに蘇ってきた。

優しかった園長先生。たくさんの子供達。
貧しい生活。街の中を走りまわって探した仕事…。

「…私達は貧しいながら必死に生きてきました。子供ながら一生懸命その時その時できる事を探して、幼いながらも自分で一生懸命考えて。」
私達は私達の意志で生きていた。たとえ苦しくても、その中から自ら選択した方法で幸せになろうとしていた。
「ミオは、ミオの幸せは…。この国の姫になることでも、見知らぬ他国の王子に嫁ぐことでもなかった」
「…」
王は何も言わず、遠くの方を見つめているばかりだ。

「陛下、陛下のこの度の私へのご厚情には心から感謝申し上げます。しかし私は爵位などはいりません。私は…」
「施設育ちのお前がどのような経緯で近衛騎士になったのかは、余にはわからんぬが。そうなるには、それなりの時間がかかったであろう」
私の言葉を遮るように、王はそう言いながらこちらを振り返った。
「いかに幼い頃施設で一緒に暮らしていたとはいえ、何年も会っていない王女の望みがそうだと、なぜそんな事が今のお前にわかる」
今度は私が何も答えない。ただ顔を俯かせていた。
王の声には少しだけ、怒りが篭っているような気がする。
関連記事

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

Comment

非公開コメント

プロフィール

書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
ようこそお越しいただきました。
こちらはけいおん二次創作SSサイトです。

ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

百合的要素を含みますので嫌いな方や都合の悪い方は見ないことをお勧めします。

当サイトはリンクフリーですのでリンクをしていただけると嬉しいです。相互リンクもよろしければ大希望です。

当サイトはまんがタイムきらら原作、アニメ「けいおん!」中心の非公式サイトです。
原作者様、出版会社様、制作会社様とは一切関係ありません。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
けいおん時計
リンク
ランキング

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。