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追憶の紋章 【4】 晩夏の異変 -07-

Category : 追憶の紋章【4】
***

何度か入った部屋。
いつも暗くなるとついているたくさんの蝋燭は、今日は一つもついていない。
「ミオ」
私の声が闇の中に響く。
「…リツ」
小さな声が部屋の奥から聞こえた。
私は闇の中を月明かりだけを頼りに、声の聞こえた方に向かう。
彼女は広い天蓋付きのベットに腰掛けていた。
私が近づく気配を感じても、じっとして身動き一つしない。

「ミオ」
もう一度、私は愛しいその名前を呼ぶ。
部屋の中は薄暗く彼女がどんな顔をしているのか見えない。
もう少し近づこうとして、不意に立ち上がってこちらに来た彼女に抱き締められた。
「リツ」
私を名前を言うその声は震えていた。
彼女の背中に手を回して、私も抱き締め返す。

「リツ、どうして…」
「ミオ」
「ドラゴンなんて、そんなの…」
ミオは私の肩に額をあてながら、話すその声は震えていた。
「…大丈夫だよ。ミオ」

必ず無事に帰ってくるから。

私は彼女の綺麗な髪を手で撫でる。
その艶やかな髪は、幼い頃から変わらない優しい感触だった。
「バカ!そんなのどうしてわかる!」
急にミオは私から少し離れて怒鳴った。その声はもう涙声だ。
「バカリツ!そんなのわからないじゃないか!」
もしかして怪我するかもしれない、もしかして…。
嗚咽の交じった声が、ミオに最悪の予想を口にさせるのを拒んでいるようだった。

「…ミオ」
「行かないで、リツ。お願い…」
力なく私にそう懇願するミオに、私は何も答えられない。
ただ彼女をもう一度強く抱き締めるだけだ。
誰もいない部屋で二人寄り添って一つのパンをわけあったあの頃より、ずっと大きくなった私達。どれ程外見が変わっても、この温もりは変わらない。

「必ず無事に帰ってくる」
バカの一つ覚えみたいに同じ事しか言えない私。ミオはもう何も言わなかった。
静かに私の唇に自分の唇を合わせてくる。私も同じように唇をそっと合わせた。
しばらくそうやってミオの柔らかい唇を味わった後、私たちは自然と離れた。
「…リツ」
私の名前を呼んだ彼女を、窓から入ってきた月の光が照らす。

…綺麗だった。誰よりも美しい、愛しい私だけの姫君。
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