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先輩たちの事情【1】 - 01 -

Category : SS( 先輩たちの事情 【1】 )
さっきから動きが激しくなった心臓を抑えるように。

私は静かにドアを閉めると、うさぎと亀が競争する階段を小走りに降りていった。
階段を降りた後もしばらく歩くスピードを落さず、廊下をひたすら歩く私の顔は、少し紅くなっていると思う。さっきよりは少し動悸が治まったきた心臓だけど、まだドキドキと音がするのが私の耳に聞こえてくるから。

またね、りっちゃん。
部室を出る時、私は彼にだけ聞こえるような小さな声でそう言った。
彼には聞こえただろうか?たぶん、聞こえたと思う。少し驚いた顔をしていたから。
彼の僅かに驚いた表情を見て、私は急に恥ずかしくなり、また少し心配にもなった。
急に慣れ慣れしいなぁ…なんて彼は思わなかっただろうか?
でも前に保健室で、私は彼をそう呼んだ。昔の、幼馴染の呼び方。

音楽室から離れ、文芸部の部室近くにくるとようやく私は歩く速度を落とした。
動悸もだいぶ治まったけれど、私はまた別のことで胸が一杯になってきていた。
そうだ、歌詞を書かなきゃいけないんだった。
もちろんそれを忘れていた訳ではないけれど。
部室を出る直前の自分の行動に自分自身で動揺して、うっかり大事な要件を二の次にしてしまっていた。

ああ、そうだ。結局承諾してしまったんだな、私。
今更ながらに、私はそれを自覚した。軽音部の新曲に合わせる歌詞を書くという事に。
学祭が終わってすぐに琴吹君に声を掛けられて、歌詞を書いて欲しいと頼まれた時。
私は最初、すぐに断った。とても無理だと思ったのだ。
文芸部への同人誌に掲載する詩ならまだしも(それだって書くのに散々悩んだ私なのに)、別の部の軽音部の新曲用にだなんて…。

それでも琴吹君が、何度も熱心にお願いしてきてくれたこと、それと。
「一度うちの軽音部へ来てもらえませんか」
部長も是非一度来て欲しい、と言ってましたから。
にこやかな表情でそう言った彼に、私の心がぐっと傾いたのは否定できない。
彼が「りっちゃん」が所属する軽音部へ行ってみたい気持ちは抑えられなかったし、何より彼が「来て欲しい」と言ってくれているなら…。

臆病な私は、いつだって自分からは何も出来なかった。
ただ望むばかりで、自分からは何も行動しない弱虫な私。
そんな情けない私に、これは神様がチャンスを与えてくれたのかもしれない。
今回限りの、一度だけのミラクルタイム。

「…ちょっと、考えさせてもらえますか」
そう思った私は、何とかなけなしの勇気を絞って琴吹君にそう答えた。
私の返答に琴吹君は、爽やかな笑顔を見せて一度頷いた後。
「じゃあ、さっそく明日にでも一度うちに来てもらえませんか」
と、そう言ってくれた。
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ジャンル : 小説・文学

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