スポンサーサイト

Category : スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

やっぱりリハビリにはリラクマSS

Category : 更新記録/日記
どうして誕生日の一週間に別れ話を持ち出すか!

二日酔いの頭を押さえながら、私は内心そう毒づいていた。
頭の中で一週間前に別れた男の頭を、ハイヒールで踏みつける想像をしながら。
「しっかし結局今年もいつもようになっちゃったか…」
痛む頭を押さえながら、私は大きな溜息を一つ吐いた。

今年の誕生日は木曜日。
生徒たち数人からのプレゼントを心から嬉しく思いつつ受け取って、その日は平穏に過ごした。
だが次の日の金曜日には、友人たちが開催してくれた誕生日お祝い兼(いろんな意味での)残念会の席で、それはそれは友人たち相手に盛大に愚痴ったものだ。

とはいえ、からみ酒も交えて飲みすぎた。さすがに反省するべきかしらね。
私は疼く頭を押さえつつ、内心深くそう思っていた。
「でも来年こそ、絶対彼氏と過ごす!」
新たな決意と共に。

そうやって二日酔いと戦いながら、来年の抱負を決意している時にふと携帯の着信音が鳴った。
「メールじゃなくて、電話なんて、久々ね…」
そう訝しりながらも、着信音が頭に響くのですぐに携帯を手に取る。
誰よ、まったく。私は今頭が痛いのよね…。
「自業自得」という四文字熟語が浮かびながらも、内心で文句を言っていた私は、画面に映った相手の名前を見て思わず「え?」と声を上げてしまった。

「もしもし、山中ですが…」
- お久しぶりです。山中様。
「いえいえいえいえ。こちらこそ、お、お久しぶりです。…斎藤さん」
- お休みの日に午前から突然にお電話致しまして、誠に申し訳ございません。
いえ、お気になさらず…とか適当に返事をしながらも、思ってもいなかった相手からの電話に私は驚いていた。それはもう、二日酔いの頭痛も一瞬忘れてしまうくらいに。

***

世の中には、ある処にはあるんだなぁ…。
と、感じいることしきりの、大きな敷地内にあるお城のような家。
その家の中の、これまた持ってる人は持ってるだなぁ…。
と、つくづく資本主義とは何かを考えさせられるような、高価な家具や調度品が揃った部屋の中。
「いらっしゃいませ、先生」
「…お招き頂きまして」
高価な家具や部屋の格調高い雰囲気に少しも見劣りしない、爽やかな男の子がはにかんだ笑顔を振りまきながら、一介の庶民たる私を出迎えてくれた。

「なにもわざわざ迎えに来てくれなくても良かったのに」
私は目の前に並べられたティーカップを手に持ちながら、そう言ってみた。
政治家や外国の貴賓を招く際に使用するような、重厚感がある黒塗りの車を見た時、「やはり自分の車で伺えば良かっただろうか」と私は痛切にそうも思ったのだけど、どうにも昨日のお酒がまだ体内に残っている気がして仕方ない。そんな時に車の運転はやはり控えるべきだろう。

「一応、僕としては気を使ったつもりなんですが」
「はぁ」
「うら若い女性教師が、いくら知己の間柄とはいえ若い男の家に来るのを、あまり他の人に知られるのは外聞として良ろしくないかと」
「…はぁ」
でもそれならもっと普通の車で迎えに来て欲しいわね。

「それで我が家でもあまり目立たない感じの黒の、窓ガラスは外から見えないものを選び、出来る限り密やかにお迎え出来るようにと」
「…お気づかい痛み入ります」
そうだった、彼は子供の頃から細やかな気を使ってくれる、繊細な男の子だった。
だがあまりにも浮世離れした生活をしている為か、いつもどこか少しズレているのだ。
色とかガラスは関係ない、あれは存在自体が目立っているんだけどね。

「でも、良かったです」
私と同じ紅茶を飲みながら、彼はほっとした顔を浮かべながらそう言った。
「何が?」
「今日はもしかしたら先生にご予定があって、断られるかと思っていたので」
「あら、どうして」
「いえ、やはり誕生日後の週末ですし。そういった場合は何事か予定があるのが、若い女性としての世の常だと斎藤が言ってましたので」
「…」
すいませんね、斎藤さん。私はその世の常からはずれまして。
「だから半分あきらめていたんですけど」
「ま、まあ、たまたま、ね」
昨日お祝いしてもらったからねー、と一応私はそう言っておく。
じゃないとなんかすごく寂しい女みたいじゃないの、私!

「たまたまでも、僕としてはラッキーです。個人的に先生のお祝いが出来て」
「そんな事しなくても良かったのに」
「いえいえ、昔の御礼も兼ねてだし、今も学校でお世話になってますしね」
「学校はともかく、昔ちょっと家庭教師してただけなのに、本当律儀ねー」
どちらかと言えば、あの家庭教師のバイトでお世話になったのは私の方なんだけどね。
大して教えていないのに、高額なバイト料もらっちゃって。
あの時は遊び過ぎで生活費が無くなっちゃってたから、だいぶ助かったのよね。
ほんと、社会人となった今では、こちらが御礼を返さないと思うくらいだわ。

「とにかく今日は久々に当家に来ていただいてありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
「誕生日当日にお祝い出来なかった分、今日はゆっくり楽しんで行って下さい、先生」
彼がそう言うと、美味しそうな料理が次々と私たちが座るテーブルへと運ばれてきた。
うわ、なんてすごい豪華なケーキ。いやいや、いくら私でもそんなに食べれないよー。
「お好きな物をどうぞ」と、言ってくれる彼を見ていると、さながら竜宮城にでも連れてこられた気分になる。

昔もそうだった。
まだ私が大学生の頃。一人暮らしなのに、遊び過ぎて実家からの仕送りを大半失った私は、てっとり早くお金になるバイトを探していた。
そんな時に先輩から紹介されたのが、家庭教師のバイト。
他のバイトより時給も高いし、まあ適当に子供の相手したらいいよね、なんて。
教師になった今でもその当時の甘い考えを持った自分を、後ろからはっ倒したい気分なんだけど、当時の私はとにかくそれに飛びついたのだった。

それがいろいろな手違いと思惑がからみあって、本来の行くべきはずだった家ではなく、なぜかこの豪邸へと一介の庶民が迷い込んでしまった。
それが現在招待されているここ竜宮城…ならぬ琴吹家。
そして今、私の目の前に居る爽やか光線常に発している彼は、琴吹家の一人息子で以前の私の教え子でもあり、現在は私が教師として赴任している学校の生徒でもある。
まったく、入学式で彼の姿を見つけた時はかなり驚いたものだ。
もっとお金持ちが行く、私立の高校に行ったものだとばかり思っていたから。

***

食後、私は久しぶりに彼の勉強部屋へと招かれた。
部屋の中はほとんど変わりもなく、当時のままだった。懐かしい。

「先生とよくここでおしゃべりしましたね」
「あはは。確かに勉強もしないで、ね」
「あの頃先生から庶民の生活?みたいなのを聞くのと、先生の自身の恋バナを聞くのが僕は楽しみでした」
「…前半はともかく、後半は忘れて下さい。一刻も早く」
ああ、そうだった。私は彼が優秀な事をいいことに、ほとんど仕事らしい仕事をしていなかった。

「それにしても、あの時は職務怠慢だったわね」
「そんな事ないですよ。僕の苦手な教科はちゃんと教えてもらったし」
それになかなか知りえなかった、僕くらいの子が読む漫画や雑誌を先生に読ませてもらって嬉しかったなぁ。
過去を思い出して懐かしむ彼の顔は楽しそうだったけれど、私は実に複雑だ。
本当に出来る事なら過去の私をしばき倒したい。

「でも先生の恋バナの方がもっと…」
「はい、それは忘れましょう、脳内からすべて!」
ああ、まだ小学生の彼に私は何てこと。今更ながらに後悔する。
ちなみに家庭教師は彼が中学二年生になるまで続いた。
しかし深く反省しつつも、私は当時の事を思い出していた。
変な言い訳になるかもしれないが、私と彼は会った当初から何となく気が合っていた。
年齢も離れているし、性別も違うけど。何となく。

それでついつい自分のプライベートな話もしちゃったわけだけど。
但し私だけでなく、彼も自分のプライベートな事を当時話してくれてはいた。
「先生と話をするのが、僕は楽しかった」
「そうね、私も楽しかったわ」
あえて言うなら、あの時私たちは年の離れた友人だった。
あくまであの時は、だけど。

「今年もきっと先生は誕生日はお一人だろうと推察してはいましたが」
「そうね…て、え?」
「お仕事がある平日でもありましたし、先生の微妙なお気持ちもあるでしょうから、ご招待は今日にしてんです」
「…お気づかい痛み入ります」
そう、彼は昔から悪意のまったくない天然な部分があった。
まあ、そこがおもしろい処でもあったんだけど。しっかし、なんか釈然としないものがあるわね!

***

夕方頃、私は琴吹家を後にした。
夕食もすすめられたけど、さすがにそれは気が引けた。
本当にそこまで歓待される程、熱心な家庭教師ではなかったし、今は教師としてある程度わきまえる部分もあるだろうと思ったから。ああ、私も大人になったものだわ。
それにしても誕生日プレゼントまでもらえるなんて。驚いたわね。

「そんな、かなり高価な物でしょう、これ」
「いえいえ、僕の初めてのバイトで買ったものだから。それ程じゃないです」
そう言って彼が渡してくれたのは、可愛らしい柄の入った手袋だった。
「大人の女性にこれはどうかと思いましたが」
「ううん、すごく可愛いい。でも、いいの?」
「はい。僕が自分で働いて得た初めてのお金を、最初はどう使おうか迷ったんですけど…」

先生の誕生日も近かったし、ちょうど良かったです。
彼はそう言って少し照れくさそうに笑った。
女性に渡すプレゼント、て本当に悩みますね。やっとり…友人の気持ちが少しわかりました。
彼の友達も、以前好きな女の子に何をプレゼントするか相当悩んでいたとのこと。
誰の事かしら?クラスメイトか軽音部の子か。どちらにしても初々しいわねー。

駅まで送ってもらった後、私はマンションまでゆっくりと歩いて帰った。
「あら」
今日は冷えるなぁ、なんて思いながら帰る途中、雪がちらほらと降って来た。
「どうりで冷えるわけね」
そう言ってコートの内ポケットに手を入れようとして、私はふと手を止める。
先程彼からもらった手袋を、リボンが大きなやや派手な袋から取り出すと、私は手に付けてみる。
温かった。

「ま、今年の誕生日もそれ程悪くなかったわね」
友人たちに祝ってもらったし、年下の素敵な男の子からプレゼントも貰えた。
なかなか良い誕生日だ。
誰に言うでなくそう呟いた私は、なんだか少し浮かれた気分になってきて、少しスキップ気味に雪の中を歩きだした。

二日酔いの痛みは、もうさっぱり無くなっていた。


***

その日の夜。琴吹家。
暖炉の前に座る若い主人に、執事は温かい紅茶を持って来た。

「今日は楽しゅうございましたか、若様」
「うん、楽しかったよ。お迎え御苦労様、斎藤」
いえ、と短く執事は短く答える。
「山中様は以前とお変わりない様子でございましたね」
「うん。前とちっとも変わってないよ。自分の恋愛話を楽しく教えてくれたあの頃のままだよ」
「そうでございますか」
「でも今は教師だから、一生懸命大人の女性ぽくふるまっている処が、僕的には楽しかった」
「…若様」
クスクス笑う若き主人を、執事はほんの少し窘める。

「もちろん年上の方を、ましてや先生をからかうような言い方をしてはいけないって事はわかってるだけどね」
なんだか、ついいじめたくなっちゃう人なんだよね、あの人は。
「とっても可愛らしい素敵な女性だから、特にね」
そう言ってまた笑う己の主人を見て、たくさんの家庭教師がこの家に来たけれど、長く続いたのはあの人だけだった事を執事は思いだす。元々成績優秀な主人が、彼女が家庭教師をしている間、成績をさらに良くするように努めていた事も。

「さて、来年の誕生日は先生どうしているかな?」
「どうでしょうか」
「誰かと特別な誕生日を過ごす…。それはもう少しだけ待っていて欲しいものだね」
楽しそうに話す主を見詰めながらも、執事はそれには何も答えず、ティーセットを持って部屋から静かに立ち去った。

end


やっぱりリハビリにはリラクマ。
さらに律澪じゃなく、さわ紬。スランプの症状は重い。
けど、久しぶりに一気に書けました。ウレシイ
なんでかさわちゃんの誕生日お祝いSSみたいになってしまった。
一昨日憂ちゃんの誕生日だったのに。ごめんね、憂ちゃん。


スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
ようこそお越しいただきました。
こちらはけいおん二次創作SSサイトです。

ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

百合的要素を含みますので嫌いな方や都合の悪い方は見ないことをお勧めします。

当サイトはリンクフリーですのでリンクをしていただけると嬉しいです。相互リンクもよろしければ大希望です。

当サイトはまんがタイムきらら原作、アニメ「けいおん!」中心の非公式サイトです。
原作者様、出版会社様、制作会社様とは一切関係ありません。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
けいおん時計
リンク
ランキング

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。