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短編「言葉だけじゃなく」

Category : 言葉だけじゃなく
この短編もリハビリのつもりで、律ちゃんボーイSSと同じ頃に書いたんですが。
うーん、なんというかちょっと微妙かなーと思って、しばらく置いてました。
今回少し手直しをして、ようやくUPする決意が出来ました。
どんな話だよ、読んでやるぜーな御方は下記よりどうぞ。

***

澪、結婚なんてするな。

右の手を強く握りしめ、背中に嫌な汗が流れるのを感じながら。
私はとうとう言ってしまった。
親の薦めるままに見合いして、トントン拍子に話が進んで。
先日とうとう結婚することが決まった私の幼馴染で、一番の親友である彼女に。


言葉だけじゃなく


澪は無言で、無表情のまま私を見詰めている。
「いまさらだけど、…ほんとーーーーーに今更だってわかってるけど!」
あー、本当に私は今更何を言ってるんだろう。
こんな時に、今この時期に、この段階で。
遅すぎるよ私、真剣に我ながら呆れる。空気読めないにも程がある。
本来ならここは間違いなく「おめでとう」と、親友の幸せを笑ってお祝いしてあげるべきシーンなのに。

「…なんか本当に今更だな」
しばらく押し黙っていた澪は、大きな溜息を一つ吐いた後、ほとほと呆れたといわんばかりの顔をしながらそう言った。その声にはちょっと笑い声が混じっている。
いわゆる苦笑ってやつ。
「うん、今更だってわかってる」
今更気付いた自分の本心に、そして救いようのない愚さに。
内心自分で自分を殴り飛ばしたい気持ちでいっぱいだけど。
でもこのままじゃ、私はどうしても…。

「…もう婚約しちゃって、結納の日も決まったって言ったよな」
「ちゃんと聞いたよ、わかってる。でも、いや、ホント、すごく今更ってことはもちろん理解出来てるんだけど…」
「理解出来てるんなら言うなよ」
「頭では理解してるけど、感情の方がちょっと追いついてこなくて」
あー、我ながら何言ってんだか!とにかくどうしようもないんだよ、澪。
このままじゃ、私はおかしくなりそうなんだよ。
本当に馬鹿、大馬鹿だー!て自分でも思うんだけどさ。
両手で頭を抱え、「うー」と小さな唸り声を上げながら、私はつくづく馬鹿だったと心底反省しておりますが。

でも駄目なんだ。…これ以上嘘は吐けない。
他人に嘘を突き通すことは出来ても、自分に嘘を突き通すことなんて無理だったんだ。
私はそれに気付いてしまった。だからもう、どうしようもない。

「澪、澪は本当に結婚したいからするの?」
今まで何となく聞きたくて、でも聞かなかった質問。
僅かな期間で婚約を決め、もうすぐ結納も交わそうとしている澪。
そんな彼女にこんな質問をぶつけること事態、かなり間違っていることはわかってるけど。
「したいよ」
あっさりそう答える澪。…ヘコむな。
澪の答えを聞いた瞬間、奈落の底まで落ちていったような気分を味わう私。

「で、どうなんだ、律」
「…へ?」
どうって…何が?
「私が結婚したい、て言ったらもう『結婚なんてするな』て言わない訳?」
「…それは、まあ」
「そんなあっさり諦めるんだ?」
「………………………え?」
なんだかどんどん不機嫌になっていく澪を見ながら、私は少し混乱していた。
「どうなんだ、律」
いや、そりゃあ、澪が心から結婚したいと思っているなら、私はもう諦めるしか…。
「どうなんだ、律!」
…み、澪しゃん、何を怒っていらっしゃる?
なぜ澪が怒っているのかわからぬままに、私はもう一度自分の胸に手を当てて考えてみた。

今日までずっと、悩み考えてきたこと。
諦めようと我慢して、無理だといい聞かせた。
いずれ私もいい人見つければいいさ、とそう誤魔化してきた日々。
でも、もうそれは無理だってわかったんだ。こんな直前になってからな!
もう戻れない処まで、澪は行ってしまっているのに。
私はそれを、無理やり引き戻そうとしいるんだ。
私は澪の一番の親友なはずなのに。

幼稚園の頃からのつきあいの幼馴染。
大学までずっと一緒だった、姉妹同然と言ってもいいくらいの仲なのに。
彼女の、澪の幸せを。
今になって壊そうとするような発言をしてしまう、私自身が私は憎かった。でも…。
「…いや、やっぱり諦められない」
やっぱりもう嘘は吐けない。
そう思った私は、自分の気持ちに今だけは正直になろうと決めた。
澪が他の誰かのものになるなんて、私には耐えられない。

「じゃあ、どうするんだ、律」
「…てゆうかですね、あの、澪しゃんの気持ちがですね」
耐えられないけれど…。でもさっき澪が「結婚したい」とはっきり私に言った。
つまりそれって、私は完璧に振られてる訳ですよねー。
「ど・う・す・る・ん・だ、律」
一文字、一文字区切って強い口調でそう聞いてくる澪。
え、えー。いや、どうするって言われても…。

「…や、止めさせる」
しかし、完璧に振られたわかっていても。
ちょっと足掻いてみましょうか…みたいな気分になる私。
「何を?」
「だから、…澪が結婚するのを」
「今更?」
「う…、い、今更でも」
あー、澪さん。そんなに何度も聞いてくる理由が、りっちゃんわからなくて困ります。
…お前、ホントに結婚したいの?

「じゃあ、してみれば」
「は?」
「だから止めさせてみれば、私が結婚するのを」
「…」
「私は止めない…てゆうか今更止めるなんて言えないよ」
あの人にも、両親にも。他の祝福してくれた人たちにも。
「私の口からはとても言えない」
澪はそう言うと、少し顔を俯かせた。
「…いや、澪は結婚したいんだろ」
「したいよ、『結婚』は。でも、私が『あの人』と結婚したいなって気持ちを、律がどーにかして変えることができれば、止めさせることもできるよね」
「…はぁあ?」
これはトンチか何かで?
いや、つまり私がどうにかして澪の気持ちを変えさせればいいのか?え、あれ?

「確かに婚約もして、もうすぐ結納もする予定。だけど私はまだ結婚してない」
「まだ」の部分を強調する澪。
「ですね…」
「だから律、私が結婚するまでの後残り少ない期間でどーにかしてみてよ」
「え?」
どうせいとおっしゃるか、澪さん!?
「期待してるよ、律」
「期待?」
「そう。律が私の気持ちを変えるために、どんなことをしてくるか。なんかちょっと楽しみだな」
「…」
そんな悠長なこと言ってられないだろ。だってもう結婚式まで。
…あ、あれ、結婚式の日取りってもう決まってたっけ?あ、結納がまだだから…。

私の足りない脳が、澪と今まで交わした会話の内容を理解するのに時間が掛かっていた。
処理速度が追いつかず、オーバーヒート気味の頭を思わず抱えて、「あー」とか「うー」とか意味不明な言葉を発する私。

「律」
さっきまでの怒った雰囲気がすっかり消え、どこか穏やかな声が私の名前を呼ぶ。
「んー、あー、あ、何?」
「遅いんだよ、言うのが…」
そう言った澪はほんの一瞬嬉しそうな顔を私に見えた。
でもすぐに、悲しそうな憂鬱な表情へと変わる。
「…」
確かに遅かったな、澪。ものすごく遅れたよ。
私はひどく申し訳のない気分になった。

「…ごめん、さっきも言ったけど私からはもう動けない。怖くて動けないんだ」
「澪…」
澪の言う怖いこと。きっとそれはものすごくいろんな事を指すのだろう、と私はすぐに理解した。
今になって結婚を止めれば、その後にはたくさんの「怖いこと」が彼女と…そして私に待ちうける事になるだろう。
世間体とか、体面とか、これからの生活とか…。他にもたくさんの怖いこと。
それらを振り切って澪が今から結婚を止めるとしたら、それは私にとっては奇跡に等しい。
仮にその奇跡が起こって、今回の結婚を止められたとしても。
その後も彼女を不安にさせることばかりだ。

…いいのだろうか。
今、私がしようとしていることは、澪をただ不安にさせて脅えさせ、あまつさえ最終的には彼女から人並みの幸せを奪ってしまうことになるかもしれない。
いや、かもしれないじゃなくて、きっとそうなんだろう…。
そんな事が許されていいんだろうか。
たとえ私が、これから生涯かけて心から彼女を、澪を「愛した」としても。

「澪」
「…ん?」
「まだチャンスをくれるなら、私は諦めない」

それでも、もう駄目なんだ。

私だってもう子供じゃない。
今自分が言ってる事がどれくらい大変な事か、私なりに理解しているつもりだ。
「あと残り僅かな時間で、澪が言う怖い事を全て無くすことは無理でも、一つ一つ消していく」
私は澪がいないと駄目だ、澪を…愛してる。誰よりも、心から。

「…どうやって?」
そう聞いてくる澪の表情はどこか不安めいて、半信半疑の様子がありありと見えた。
「それは、…これから考える、真剣に。頭から煙が吹いて爆発するくらい、考えに考え抜く!」
必ずそうする。澪の怖いことは全て取り除いていく!
私が握り拳を作りながら力強くそう言うと、澪が急にクスクスと笑い出した。

「馬鹿の考え休むに似たり…てね。律はうんうん悩むより、まずは行動する方が向いてると思うけど」
「な、なんと。そんな事ねーやい。とにかく私なりに考えて…」
「…考える前に、まずは私に言うべき事とか、その、する事があるんじゃないのか、律?」
澪はふと私から視線を逸らすと、なんだか急にソワソワした感じになった。
よく見ると、澪の頬が少し紅くなっている。…あー、そゆ事か。

「澪」
名前を呼びながら、私から視線を逸らしたままの彼女の側に徐々に近寄る。
「確かに、考えてばかりで行動しない私なんて、らしくないよな…」
そう言うと、私は澪の頬に左手を軽く添える。
そのままそっと彼女の唇に自分の唇を合わせた。

「律のバーカ、本当に何もかも遅いんだから…」
短いキスを終えた後、澪は私の背中に両腕を回しながらそう言った。
「ごめん」
私は澪の腰に両腕を回しながら、ぎゅっと力を入れて彼女を抱きしめた。
「これからはなるべく遅れずに、ちゃんと澪に本当の気持ちを伝えます」
「そうだな、そうした方がいいかもな」
でも私はまだ、結婚するのを止めるとは言ってないぞ、律。
澪は私の瞳をじっと見詰め、ほんの少し笑ってそう言った。

「これからが勝負だろ、澪。覚悟しろ」
私は彼女の耳元にそっと囁くようにそう告げた。それは戦いの合図みたいなものだ。
後残り僅かな時間だが、私は澪の気持ちを必ず変えてみせると内心で固く誓う。
もう躊躇も、うんうんとらしくもなく唸りながら、頭使って考え込む時間はないんだ。
だから、澪。

「澪、愛してる」
これからは私の澪への気持ちを、嘘偽り無く伝えるよ。あとさ…。
「…律」
私の愛の告白を聞いた澪が、驚きで目を見開くのを見ながら。
私はもう一度、彼女にキスをした。
今度はさっきの触れるような優しいキスじゃない。
彼女を深く愛していると伝えるためのキス。

言葉だけじゃ足りないだろうから、これからは行動でも伝えていくよ、澪。

彼女の柔らかい唇を味わいながら、私は内心でそう思っていた。





一ヵ月後、澪は婚約を破棄した。


end

なんか実験的な気分で書いてみたんです。
タイトルの付け方も他の短編とは位置を変えてみたり。イミハナイデス
ものすごく崖っぷちな処で、律ちゃん覚醒…みたいな。
澪ちゃんは澪ちゃんで何となくずっと待ってたけど、しびれきらした…みたいな?
なんだか暗いような、明るいようなお話。

短編「言葉だけじゃなく」を読んで頂きありがとうございました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
ようこそお越しいただきました。
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ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

百合的要素を含みますので嫌いな方や都合の悪い方は見ないことをお勧めします。

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