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短編 「やっぱり君が好き」

Category : やっぱり君が好き
「どっちの君も好き」のちょっと番外編。
だいぶ前に書いていたのですが、そのときはなんとなく気に入らずアップせず。
昨日読み返していくつか修正して、今更だけどどうしようかと悩みつつ結局アップップ。
読んでやるぜーという方は下記よりどうぞ。

やっぱり君が好き


音楽室のドアと階段の僅かなスペースに、私と今にも泣きそうな女の子が一人立っていた。
「ごめんな。私、好きな人がいるんだ…」
チラリと横目に映るうさぎと亀の彫刻を見ながら、私はいつも通りのお断り文句を目の前の女の子に告げる。
「…そう、ですか」
呟くようにそう言った彼女の目にはもう涙が一杯。…ああ、毎度申し訳ない。
「わかりました。ありがとうございました」
あの、良かったらこれ…。
泣くのを堪えるようにしてなんとか笑おうとする切ない表情で、手に持っている可愛らしくラッピングされた袋を私に渡してくれる。
「…あー、いいの?」
お断りしておいてこんなのをもらうのはちょっと気が引ける。
戸惑う私に「いいんです」と言ってもう一度お礼を言ってから、軽く頭を下げて階段を逃げるように降りていく私より一学年下の女の子。
「ありがとう…」
私はその子の背中にお礼を言って見送る。
彼女が見えなくなっても、私は音楽室のドア前で少し呆然と立っていた。
仕方のない事とはいえ、申し訳ない気持ちがフツフツと湧いてくる。なんともやりきれない気分…。

「お疲れー、りっちゃん」
「お疲れ様」
「毎回大変ですね、律先輩」
部室に入ると同じ軽音部部員三人が、少しだけ冷やかし気味の笑顔を浮かべながら私に労わり?の声を掛けてきた。
「別に疲れてないしー」
三人の意味ありげな笑顔を私は軽くスルーしながら、椅子に置いてあった鞄を肩にかけた。
「さて、早く行かないとな」
もう下校時刻が迫っていた。もうあっちの部活終わってしまっただろうか?
「そうだね、早く行かないと帰ちゃうかもよ~」
鞄を持って慌ててドアに向かう私に、唯がまたもや冷やかし気味にそう言ってくる。
「そうですね」
音楽室を照らす夕日を眩しそうに見ながらそう言った梓も少し笑っていた。
「ふふ。大丈夫よ」
なんだかんだいって、いつも待っててくれるんでしょう、彼女。
梓と同じように夕日の中に立つムギはくすくすと楽しそうに笑ってそう言った。
まったく、三人してなに笑ってんだよ。
「愛しの幼馴染さんをお迎えだね~」
冷やかしから、からかい気味のニヤニヤ顔に変わる唯。
「何とでも言え」
もうその手のからかいには慣れていた。
「でも急いだ方がいいわ、律ちゃん」
時計を見ながらムギがそう言う。確かに今日はいつもよりちょっと遅くなっていた。
さっきの女の子からの告白で時間が取られたからだ。
「うん。悪いけど先行くわ」

行ってらっしゃ~い。
失礼します、律先輩。
じゃあ。

手を振る三人に「お先」と言ってドアを開け、階段を駆けおりた。

まだ大丈夫だと思うけど、心持ち焦りながら文芸部の部室へと急ぐ。
私は早足で廊下を歩きながら、頭の中ではついさっきの事を思い出していた。
私に断られても御礼を言ってプレゼントを渡してくれた後輩の女の子。見た目も可愛いし、私以外なら誰でも即効でOKだろうになあ…。
「はあ…」
高校入学してから今まで何度かされた告白をすべて断ってきた私。
好意を抱いてくれるのはとても嬉しいが、さすがに最近は毎回そんな相手の気持ちに断るのにちょっと疲れてきていた。
「…はっきりさせるべきだよなあ」
告白してきた彼女たちと比べて、チキンハートな自分が情けなくて仕方ない。
彼女達の勇気の十分の一でも分けてもらいたいもんだ。
唯たちにだって「そろそろはっきりしなよ」なんて部活中に言われる始末だ。こうやって毎日文芸部に迎えに行くのだって、本当は少し勇気がいるのだ。
たぶんあっちはそんな事気付いてないだろうけど。

文芸部の部室近くまでくると、まだ部屋の中には人が居る気配がした。
少しだけ開いていたドアの隙間から夕日が暗い廊下に細い線となって伸びている。
良かった。まだ部活は終ってないらしい。
私は少しホッとして、部室のドアに手をかけようとしたとき隙間から中が見えた。
「澪…」
思わず口から漏れたのは、私の幼稚園からの幼馴染の名前。

ドアの僅かな隙間から見えた彼女は静かに、穏やかな表情で少し微笑みを浮かべながら一心に本を読んでいた。
艶ややかな美しいロングの黒髪は、今は夕日に彩られて金色に染まっている。
髪と同じように紺色の制服も紅く染め上がり、女の子にしては大きいと彼女がいつも引け目を感じている、でも私から見たら白くて細い精細な手がページを優しくめくっていた。
とっても静かに、そして楽しそうに。

綺麗だった。

金色に包まれ輝く部屋。その幻想的な光景の中にいる彼女から私は目が離せない。
私はしばらく彼女に見蕩れ、文芸部部室のドア前に立ちすくんだ。
幼い頃からずっとそう思っていた。…澪は綺麗だ。
その長い黒髪も、出あった時は時折しか見せてくれなかった笑顔も、大人しくて控え目で、人一番人見知りで、ちょっと泣き虫な所も。
ずっとずっと好きだった。

小学生の頃から私は彼女にいつもちょっかいを出していた。
最初は迷惑そうな顔をしていた澪も、慣れるにつれてだんだんと私に心許してくれるようになった。そしてそれは高校生になった今も続いていて、こうやって毎日文芸部に迎えに来て澪に「ちょっかい」を出している。
そうでもしなければ、澪との距離がすぐ開いてしまいそうな気がするから。彼女の中に自分の存在を忘れずに置いていて欲しかった。どんな形であれ。
まあ、時々やりすぎて頭に拳骨落とされたりするけれど。

ずっと集中して本を読んでいたんだろう。文芸部の仲間に声をかけられて、澪はハッとしたように顔を上げた。皆が帰り支度をしているのを見て少し慌てたように立ち上がって本を鞄に入れる姿が私の目に映る。
私もドアから少し離れた。覗き見してた、なんてやっぱり具合が悪い。
部屋の中から澪に向かって数人が、少しだけ笑いが交じりながらも「今日は遅いわね」なんて声をかけていた。

おっと、それは私の事ですな。

皆に聞かれて澪が照れながらも少し大きめの声で「まったくわかりません!」なんて声が聞こえてきた。そりゃあないぜ、澪しゃん。
ま、照れているのはわかってるけどさ。はー、でもちょっと落ち込むかな。
ドア近くに向かってくる澪の気配を感じながらそんな事を思いつつ、私は澪より先にドアを勢いよく開けた。
「おっ邪魔しまーす!」
おちゃらけた感じで明るく挨拶する。これが私のキャラですから。
「あれ、今日ちょっと遅くない?田井中さん」
「いやー、ちょっと練習に熱が入っちまって」
まさか可愛い女の子からの告白を断っていたのでちょっと遅くなりました、なんて言えようはずがない。私はニカっと笑う。ごまかしの笑い。
「澪先輩、お待ちかねでしたよ」
え、マジ?
文芸部の後輩の子にそう言われて私は内心ちょっとドキっとした。
「ええー、そうなのかあ。いやー待たせたなあ、澪」
でも内心の嬉しさを隠してまたいつものようにおちゃらける。
「待ってない」
ハハ。言うと思った。
「またまたー。照れない、照れない!」
「何言ってんだ!」
澪とのこんないつもの遣り取りが私にとっては心地よくて、でも今はちょっと辛い。

いつものことなので、文芸部の皆様もさしてとりあわず「それじゃあ、また」と軽く私らに手を振って部室から出ていった。
「よーし、私らも帰ろうぜ、澪!」
「あー、帰るとも!」
私は澪に背中を向けてさっさと部屋を出て、廊下を歩いていく。
「待ってよ、律」
そんな私を澪が少し小走りになって追いかけてくる。
後ろから澪が近づいてくる気配を感じながら、私は足を止め待っていると、ふと頭の中で聞こえてくる唯の声。

そろそろはっきりしなよ~。

「ほら、早くこいよ、澪」
そう言いながら顔だけ後ろを向いて澪を見た。
確かにそうだな、唯。
他の女の子たちの告白を断るのにも疲れたしな。
でもそうは思っていも、この居心地の良い幼馴染で親友の関係を壊すのを怖れて、何も出来ない自分が居るのも事実だった。
「…まったく体は小さいのに歩くのは速いんだから」
澪がブツブツと文句を言いながら私の方へ近づいてくる。
私だってこのままなんてやっぱり嫌だけど…。
澪が隣に来るのを待って、一緒に歩き出す。
少し薄暗くなってきた廊下を澪と歩きながら、私はこの間から考えていたことを実行してみようと思い始めていた。

それはとりあえず軽音部に一度澪を連れてくること。

私は前から一度澪と一緒に演奏して見たかった。
もちろん二人だけなら家で何度かしたことあるけど、軽音部の皆と一緒にだ。
軽音部のメンバーはドラムの私に、ギターの唯と梓、キーボードのムギ。ベースは去年卒業した先輩が弾いていた。
卒業した先輩に代わって澪がベースを弾いてくれたら。
二年生になってからずっとそのことを考えていた。
とりあえずそのために、まずは澪を一度軽音部に来てもらわなければ。それで軽音部の皆に協力してもらって、澪がいつでも軽音部にこれるような雰囲気にする。
それには文芸部の部長にもご協力いただかないといけないけど…。

窓の外を見ると部員達に挨拶する部長の姿が見えた。
さっきドアを開けた時、部室の奥に居た部長がこちらを微笑ましいといった感じでニコニコしながら見ているのに私は気づいていた。まあこっちの方は問題ないけどね。文芸部の部長の弱点は掴んでるんだもんねー。ニヒヒ。
頭の中に昨年卒業した先輩の顔が浮かび上がってきて、ちょっとばかりおかしい気分になってくる。先輩驚くかな?
「どした、律?」
ちょっとばかりニヤけた顔になっている私に、澪が声をかけてきた。
「い、いや、別に。それにしても腹減ったー」
お前はいつもそればっかりだな。
呆れたように、でも少し笑いながらそう言った澪に私は「へへ」と笑い返す。

…この想いを澪に話してしまえば、もしかして今の関係が壊れてしまうかもしれない。
その恐怖はどこまでも私を臆病にする。でも、やっぱりこのままじゃあ嫌だ。
だから私は決意する。
「なあ、澪、今度の学祭でさあ…」
まずは澪をこっちの土俵に上げてやるんだ。軽音部の、私の居場所に。それに澪が実は家でこっそり一人でベース練習してるの、私は知ってるしな。
もうすぐ学園祭がある。私はそれに向けてライブも自分のこの想いにも全力投球することを決めたのだ。


…と、このときはそう固く決意していたのに、学園祭前にいろいろな事が起って、そのせいで私の決心はかなり鈍り、想いを伝えることなど無理だろうとほとんどあきらめかけてたんだけど。
唯やムギ、梓にけしかけられてなぜかステージ上でもうやぶれかぶれの大告白タイム…。
ま、結果的にうまくいった訳で良かったんだけど。
それについては軽音部の皆と和に感謝してもしきれないぜー。
私はあの時のことを思い出し、心の中で皆に合掌してお礼する。

しかし今思い出してもあれ、かなり恥ずかしい…。
私ですらそう思うくらいだから元来恥ずかしがり屋で目立つことが大嫌いな澪に、あんな大勢の前で告白しちゃったりして後で絶対殺されるな、と覚悟決めたりしたんだけど。
でも、なんだろ?あの時は恥ずかしかったり後が怖かったりと、いろいろなこと思ったけど。
なんというかー、ずーと言えなかった「好きだー」って気持ちをとうとう叫んじゃったからかな?それで吹っ切れちゃったっていうか…。

あの後の演奏は最高な気分だったー!

…でもライブ終了後すぐに音楽室に血相変えて乗り込んできた澪を見たときは、もういろいろ終わりだなと本当に思ったよ。

end

「どっちの君も好き」の律ちゃんのお話でした。律ちゃんはこんなこと考えてましたって話。
念願かなって澪ちゃんと一緒に新歓ライブ演奏できたことに大満足している律ちゃんですが、その後澪ちゃんのファンクラブが出来たのは予想外。
ファンからちやほやされる澪ちゃんを見て律ちゃんハラハラ。
今度の学園祭ではステージ上で澪にキスして全校生徒に見せ付けてやろうか、とか不埒なことを考えたりしてます。

短編「やっぱり君が好き」を読んで頂きありがとうございました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
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ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

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