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いいなづけ 第十五作目 - あとがき -

Category : SS( いいなづけ 【15】 )
いかかでしょうか。大したことはなかったと思われますが。ビウラデシタ?

律ちゃんが受験勉強のストレスでちょっぴりトチ狂った…わけではありません。
まあ、若干観覧車の中では…ゴホ、ゴホ。
次のお話はこれの続きで律ちゃんが主人公のお話です。

いつもなら澪ちゃんが「ヤダ」と言ったら大概のワガママならぬご要望は
聞いてきた律ちゃんですが…。ではまたそれはこの次で。

いいなづけ 受験生の秋 秋山澪の場合」読んで頂き
ありがとうございました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

いいなづけ -11- 受験生の秋 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【15】 )
玄関から靴を脱ぎすて、慌てて私の部屋に行って窓からこっそり下を覗いてみると、律はまだそこに立っていた。隠れるように見ていたのに律は目ざとく私の姿に気づいて両手を振ってる。
私はまたムッとした気分になってカーテンをしめた。
本当は律がまだ立っていたことに嬉しく思っていたのに。
我ながら素直じゃないと思うけど、今はどうしもようなかった。
律のバカ!明日はもう絶対いつもみたいに起こしになんか行ってやらないからな!
私は部屋の中でぶつぶつと悪態を吐きながら、ベットの上に倒れこんだ。

あまり食欲がなくて軽い夕食をすませると、私はすぐにお風呂に入った。
遊び疲れた体を温かいお湯中で癒しながら、私はさっきのことを思い返していた。
律が突然「もう一人で勉強するからしばらく会わないでおこう」と言った事。
それは律が私の模試の結果を見て成績が落ちたのは自分のせいだと思って。それが申し訳なくてそう言ったのだ、というのはわかっているけれど…。
いくら受験という理由があっても、別に毎日学校では会うといっても。
律から「しばらく会わないでおこう」と言われたときはショックだった。

それと観覧車の中でこれも突然と言っていいのかもしれないけど、律が、その、ちょっといつもより積極的で。それがちょっと、ううん、すごく怖いって思った事。
律の事怖いなんて思うのは始めてだった。小さい頃はいたずらされたりして困ったことはあったけど、怖いなんて思った事は一度もなかったのに…。
二つのことが重なって私の頭の中はちょっとごちゃごちゃしてしまっていた。

ごちゃごちゃといろいろ考えていると、いつもの不安がムクムクと頭に湧いてくる。
この間夏休みの終わりに律から始めて「愛してる」って言われたとき大分無くなったと思っていたマイナスの感情。
…本当はやっぱり教え方がスパルタ過ぎて私と一緒に勉強するの嫌になったのかなあ。
「でも、あれくらい普通だ、そうだよ」
だって律はまだまだ頑張らないと大学受かるかどうか危ない所だし!律だって私と一緒の大学行きたいって言った。行けたら嬉しい…て唯がそう聞いたって前に言ってたし。
「はぁ…」
私は湯船の上に深いため息を落とす。

でもそれで私と一緒に勉強するのが嫌になったとしても、別に私のことを嫌いになったわけじゃあないよね。だってそれならあの時…そ、そのあんな所で、あんなキスはしてこないよね。
そこまで考えて私はまた顔がカーと熱くなるのを感じて思わず湯船に顔の半分を沈めた。ぷくぷくと現れ消える水面の泡。
観覧車の中で背中を優しく、でもちょっと意味深に撫でてきた律の手の感触を思い出してますます顔を紅くしてしまう。キスはともかくいつもはあんなことしてこないのに。
それともあれかな、あの積極さはしばらく会わない(とゆうか二人きりにはなれない)から今の内にちょっと強引にでもキスしておこうかなーなんて思ったのかな、律。
もしそうだとしたらエ、エッチな奴。
そうだ、だから中学時代あんなDVDを平然と一緒に見る?なんて聞いてくるんだ、あいつは、まったく…。ん?あ、そう言えば…。
ふと思い出し、私は顔を水面から上げて大きく息を吸った。

遊園地の入場券売り場で律を待っている時に思い出した中学時代のこと。律がエ、エッチなDVDを見ていたことをなぜ急に思い出しただろうと、その時は漠然と考えていたけれど。
思えば中学三年生の時、今と同じように高校受験でずっと勉強漬けだった私と律が久しぶりに息抜きとして行ったのが、あの遊園地だった。
多分その後すぐくらいだと思う。律を驚かせてやろうと家にこっそりはいって律がDVDを見ていたことに私が気づいて固まったのは。
なんとなく居た堪れないとゆうか、すごく変な気持ちになったのは覚えてる。律とファーストキ、キスしたばかりだったから余計にちょっと過敏になってしまったというか。
遊園地、受験。今と同じ似たような状況だからかな。
それにしても別にそんなつまらない思い出、思い出さなくても良いんだけどな。
久しぶりに律と二人で行ったあの遊園地は懐かしくて、良い思い出ばっかりなんだから。思い出すならそれだけでいいのにさ。
ああ、それにしても。

昔から律は一度決めたことはけっこうちゃんと守ろうとする。…決めるまではいい加減な奴だけど。一人で勉強する、と決めたのならきっとそうするだろう。律は昔から変な所で頑固な一面があった。
「はぁ…」
バカバカ、バカ律。今さらなんだよ。今さら私の成績の心配なんてお前らしくない。
…ううん、律らしい。
律の気持ちはわかっていても、これから受験まで律と学校以外では会わないのか、と思うとなんだか寂しくて仕方ないし悲しくもあった。
あーあ。私ってば本当はこんなに律に依存してたんだ。
そう思うとなんだか情けない気持ちにもなるし、少し怖い気もする。
律の言うとおり、私も受験までは一人で頑張ろうかな…。
「って、私は元々そのつもりだったんだ!」
最初は「教えてー」て泣きついて、今度は「一人で勉強する」なんてさ。本当に勝手な奴!
そう文句を言いながら、体を深く湯船に沈める。

律のバーカ。

心の中で律への文句が止まらないなあーなんて思いながら、私は目を閉じて温かいお湯に身をゆだねた。
もう明日は仲直りしようかな…。律は私を心配して言ってくれてるのはわかるし。
「でもやっぱり明日はいつもみたいに起こしに行ってなんかやらない!」
ちょっとだけ殊勝な気持ちになったけれど、そこは譲らないとばかりに叫ぶと私は髪を洗おうと思って湯船から勢いよく立ち上がった。

久しぶりに律とデートした高校三年生の、受験生の秋の一日。
それは最初はとっても楽しかったのに、最後は喧嘩になり私の頭の中がごちゃごちゃになってしまった散々な日となった。

end

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

いいなづけ -10- 受験生の秋 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【15】 )
「ごめん、悪かったって。もう泣くなよ~」
「り、律が~」グスグス。
「ごめんって…」
律は私をまたさっき植物園から出た時みたいにベンチに座らせると、大急ぎで自販機から温かいココアを買ってきた。
「これ飲んでちょっと落ち着いてよ、澪」
「…うん」
温かいココアを飲んでようやく少し落ち着いた私。そんな私の様子に律はホッとしたような表情を見せると、さっきとは違って少し私から距離を取りながら同じベンチに座った。
「澪、もう大丈夫か?でも何もそんなに泣かなくても…」
「だって律が、律が…」グス。
「うん、ごめん、私が悪い。全面的に私が悪い」
「り、律がしばらく会わないって言うから…」
「うん、そうだな…って、え?そっち!そっちの方!?」
てっきりさっきの…だと、と私から顔を逸らしてブツブツと何か呟いている律を横目で見ながら、私は内心でもちろんさっきのこともあるけど、こっちのこともあって…と考えてたりして。
なんかもういろいろごちゃごちゃな気分になっていた。
「さっきのも!…なんか律怖かった」
「あ~。すいません…」
そう言ってまた謝った後、律はとりあえず気まずい雰囲気を変えようとしてかゴホンとわざとらしく軽い咳き払いした。
「さっきのは悪かった。もうその…澪が嫌ならしないから、さ」
律はちょっとバツが悪そうに苦笑しながらそう言った。
…嫌というか。別にキ、キスするのが嫌な訳じゃないんだけど…。でもさすがに今それを言うのは恥ずかしかった。

「で、ちょっと話を戻すけど。さっきも言ったけど別に一生会わないって訳じゃなくて受験が終わるまでだぞ。わかってるだろ」
「…わかってる」
「三ヶ月程度だし。それに会わないって言っても学校で会えるし。放課後とか休みの日にどっちかの家で一緒に勉強するのを止めようって意味で…」
「わかってる。…でも、なんかヤダ」
私はプイと彼女から顔を逸らした。
「え」
「それヤダ」
「ヤダって…」
自分でもよくわかってるだけど。これが拗ねてるだけだって、子供みたいに。
「澪しゃん、ちょっとだけじゃん。それに澪だって自分の勉強を…」
「ヤダ」
子供みたいに拗ねてて情けない、とは理性ではわかってるんだけど。感情がどうしても小学生以下になってしまう。
「澪ー」
ちょっと困った声で私を呼ぶ律だけどチラリと横目で見たその顔は、ちょっと嬉しそうなのは私の見間違いかな。いや、きっと間違いじゃない。

しかしそんな嬉しそうな顔もすぐに引っ込めて、律はまた少し真面目な表情を作る。
「と、とにかく駄々こねるのは止めなさい、ね、澪しゃん。お互いためなんだから、そんなちょっと学校以外で三ヶ月くらい会わないだけだしさー」
「…律はそれでいいんだ」
「え?」
「律は、私と会えなくても大丈夫なんだ」
だから学校で会えるってば、と内心自分で自分に突っ込み入れてはいるのだけど、もう我ながら滅茶苦茶ワガママな気分。
「…」
「律はいいんだ」
ここで私は大丈夫だよ、なんてさらっと言ったら拳骨の一つも落としてやる。
内心そう思いながら左手に力を込めて律の返答を待つ。
「…よくはないけど」
渋々と言った感じでそう言った律の表情はどこか複雑そうだった。私は少しホッとして、とりあえず手の力を抜いた。
「なら…」
「とにかく、もう決めたんだ。私も受験勉強一人でちゃんと頑張るから。澪も自分の勉強に専念しろよ」
決まり!ほら、帰るぞー!
そう言ってまた私の手を掴んで立ち上がらせようとした律の手を私は思いっきり跳ね除けた。
「み、澪?」
「律のバカ!バカ律!勝手な事ばっかり言って!」
勢いよく立ち上がって自分で思った以上に大きな声を出してしまった。

強引にキスしてきたり、勝手に自分で決めたこと私に押しつけてきたり!

内心でそう思うとどうにも腹が立って私は律に何も言わず、一人遊園地のゲートに向かって歩き出した。
「お、おい、澪」
「ついてくるな!」
「いや、そうは言ってもそっちが遊園地の出口なわけで」
「バカ律!」
「そ、そんなバカバカ言うなよ、バカ澪!」
「うー、バカー!」
お互いバカバカ言いながらゲートをくぐって私達の思い出の遊園地を後にした。

遊園地を出た後も律はちょっと私から距離を取りつつも、同じ電車に乗って、いつもの同じ帰り道を歩いて私の家まで後ろから付いてきた。
私は玄関の前でチラリと律を見てみる。律は私の視線に気づいてニッと笑ったかと思うと「また明日、学校でな!」と言って手を振った。

な、なんだ、律の奴。私はまだ怒ってるんだぞ。

律の能天気な態度に私は一旦納まりかかっていた怒りがまた再燃してきた気分だった。
「バカ!」
最後にもう一度だけそう言って私は荒々しく音を立てながらドアを開けて家の中に入った。

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いいなづけ -09- 受験生の秋 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【15】 )
「え」と一つ呟いて窓から上を覗くと確かにあと少しで頂上に届きそうだった。
律が「よいしょ」と言いながら、スッと私の隣に来て座ろうとする。
律の動きに合わせて揺れる私たちが乗る赤い色のゴンドラ。
「わ、わ」
揺れに反応して私はちょっと声を上げながら、思わずすぐ側に居る律の体に抱きついた。
「大丈夫だって。そんな怖がるなよ」
律はもうすっかりわかってます、みたいな感じで隣に座り、片手を私の体に回して自分の方に抱き寄せた。
「別に怖がってなんかない!」
「はいはい。怖かったのは小学生の時私が揺らした時だけなんですよね~」
「う」
だって、あの時は律ったらこんな狭い中であっち行ったり、こっち行ったりして落ち着かなくてその度にすごく揺れたから。
「どっちにしろ、それ律のせいだろ、だいたい律はいっつも落ち着きがなくて」
「澪、頂上だ」
私の文句を封じるように律は視線をまた窓の方に向ける。言われて私も彼女に抱き寄せられたまま顔を窓の方へ向けた。
そこには美しい夕日の中に佇む私達の住む街並みが広がっていた。

「…綺麗」
「うん。…綺麗だな。」
二人して少し外の風景に目を奪われる。子供の頃から何度か見た景色。それでもやっぱり感動してしまう。
「澪」
律がちょっと低い声で私の名前を呼んだので私はその美しい光景から目を離し、素直に彼女の方を向く。これから律が何をするかはわかってるけど、今更それを拒む気はない。
ただ頬が少し紅くなってくるのだけは、いくつになっても止められそうにない。
静かに目を閉じた私の唇に律の唇が重なった。優しいキス。中学生の時と、ファーストキスと変わらない。・・・ううん、あの頃よりは少しはうまくなったかな?二人とも。
しばらくして律がゆっくりと唇を私のそれから離した、と思ったらまたすぐにキスをしてきた。
えっ?
もう遊園地定番の観覧車頂上イベントは終わったと思っていた私は少し驚いた。
さらにそのキスがさっきのような軽いキスではなくて、そのちょっと大人な、いわゆるデ、ディープなキスだったので、私は驚きを通り越してちょっと慌ててしまう。
「ん、ん」
そういうキスは別にその、始めてという訳ではなかったけど。でも場所が場所なわけで。
いくら観覧車でカップルが、その…キスするのが定番イベントだったとしてもこんな濃厚なキスじゃないと思う。
律の背中に回した両手で彼女の背中を軽く叩いても、律はキスを止めてこなかった。一度唇を離しても、またすぐに追いかけてくる唇。てゆうか、…いつまでしてくるの、律!
「ちょ、り…」
ちょっと離れようとして私がジタバタしたせいで、またゴンドラが僅かに揺れる。
「澪」
「律、ちょ、ちょっと、もう…」
頬を淡く染める、からすでに真っ赤になりながら私がそう言って止めようとしても、律は片手を私の頭の後ろに持ってきて、もう一方の手で私の体を抱き寄せてまたキスをしてくる。
なんだかいつもと違う律の態度に私は少し不安になってきた。しかも律は唇だけでなく、私の首筋にもそっとキスを落としてきた。

「ひゃ」
首筋に感じる律の唇の感触に思わず小さな悲鳴にもにた声を上げる。律は私のそんな声に動じず、さらに腰に回していた手でゆっくりと私の背中を撫でるようにして触ってくる。
「あ、ちょ…」
律の手や唇の動きから与えられる不思議な感覚と共に、私は恥ずかしさといつにない律の強引さにさっき僅かに芽生えた不安がだんだんと恐怖に変わっていくのをはっきりと感じていた。
律の強引な行動に私が困惑しながらも、ゴンドラはどんどん地面へと近づき降りていく。
「り、律。もう、駄目。もう下に…」
「澪、澪」
何を言っても止めてくれず、ますます体を寄せてまた深くキスしようとしてくる律に、私の目からとうとう涙が零れてきた。なんだか怖い。今の律は怖い。
訳の分からない恐怖の中で突然私はさっき「しばらく会わない」と言った律の声が頭の中を掠めて、ハッとなって目を見開く。
「やだ!」
思い切り力を込めて律の肩に手をかけて叫びながら彼女の体を押した。
「え?あ…」
「もうやだ、グス、り、グズ、りつぅ」
「み、…澪!?」
私が泣いているのを見て、律はようやく正気に戻ったかのようにバッと音が鳴るくらい大慌てで私から体を離した。
「ご、ごめん!澪。あ、ホントごめん!」
「バカァ。もう、グス。下に着く、だろグスグス」
「あ、本当にごめん。ちょっ、ちょっと夢中に、いや、なんてゆうか」
グズグズ泣き続ける私に、律は何度も「ごめん」と言って頭を下げてくれたけど、どうにも涙が止めることができない私。
結局私は泣き止むことが出来ず手で目を覆って観覧車から降りた。
降りてきた二人の内一人は泣きながら、もう一人は「ごめん」と謝り続けている。
そんな二人の様子は傍目には観覧車の中で喧嘩か、別れ話でもしたカップルみたいに思われただろう。
観覧車の下に居る管理員のお兄さんがちょっと同情するような目で私を見てたし…。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

いいなづけ -08- 受験生の秋 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【15】 )
植物園の出口を出て、周りが木に囲まれている人気のないベンチに律は私を座らせた。
「泣くなよ、澪」
そう言って律は立ったまま、正面からベンチに座っている私の背中に両手を回してきた。そのまま律は私を軽く抱き寄せてポンポンと優しく私の背中を叩く。
抱きしめられて律の体の温かかさを感じて、私はようやく涙を止めることができた。
「別に変な意味じゃなかったんだけど…。あのさ、澪。澪のこの間の模試の結果…前よりちょっと落ちてただろ」
私が落ち着いたのを見計らったように、律は言いにくそうにそう言った。
「え?」
彼女の胸の下あたりに顔が埋めていた私は、律に隠していた模試の結果の事を言われて驚いた。
「勝手に見て悪かったけど。今回の澪の模試の結果、私見ちゃったんだよ。前よりちょっと判定評価が落ちてただろ。…といっても、私よりはずっといいけどなー。ハハ」
私の頭の上で苦笑いをしている律。
律に見られたそれは、私が今回の結果は律にバレないようにと気をつけていたものだった。どこで見られちゃったんだろう、というかそれより。
「あ、あれは…」
「やっぱさ、私の面倒見てたからだと思うんだ。それって」
澪しゃんの勉強時間を奪っちゃってたわけでー。
「良くないよなー、やっぱ。それは」
声はおちゃらけた雰囲気だったけれど、本当は律がものすごく申し訳なく思っていることが私には分かった。
「ち、違う。今回はたまたま…」
「とにかく。これからは私も一人で頑張るよ」
律は私の背中に回していた手を離し、今度は片手を私の頬に優しく添えた。
私の目を見つめるその目は優しいけれど、表情は真剣そのものだった。
「律…」
「な、そうしよ。絶対サボったりしないからさー。よし、この話はこれまでとして。そろそろ観覧車行こうぜー!」
早くしないと暗くなっちまうぜー!
律は私の手を取って立たせると、またさっきみたいに強引に引っ張って連れて行く。
律の背中を見ながら私はなんと言っていいかわからず、黙って彼女に引っ張られたままだった。

観覧車は植物園のさらに上にあり、僅かに傾斜のある道を歩いていくと山の沿って作られたこの遊園地の頂上に夕日を浴びて金色に染まった観覧車が現れた。
小学生の時も中学生の時も律と二人で一緒に乗った観覧車。高校生になった今、もう一度ゆったりと回転する観覧車のゴンドラの一つに二人して乗り込む。
私たちを乗せたゴンドラはゆっくり、ゆっくりと上がっていく。
山の上にある観覧車の中から街全体の風景が見えてくる。私達の住む街。子供の頃からずっと、律と二人で過した街。
「久しぶりだなー、これ乗るの」
「…」
私の正面に座っている律は懐かしそうにそう言って窓から外を眺めていた。私も内心では同じように思っていたけれど、まださっきの律の話が胸に引っ掛かっていてなんとなく黙ってしまう。
「おお、私らが通ってた小学校見えるぞ、澪。中学はあれかな?桜ヶ丘は…」
観覧車と同じく夕日に染まる街並みを見て律は楽しそうだった。
「さすがに高校は場所が違うから見えないかー。おい、澪、どした。テンション低いぞー」
「…なあ、律」
さっきの話だけどやっぱり…。
楽しそうにする律とは対照的に私は少し顔を曇らせながら、もう一度さっきの話の続きをしようとした。
「澪。さっきの話ならもう終わってるぞ」
ほらほら、今はこの風景を楽しめよー。
けれど律は誤魔化すように街を眺めながらそう言って私の言葉を遮った。

「…別に、一緒に勉強してもいいじゃないか」
でも私は律が誤魔化してもそれには乗らず、話を戻そうとする。
「確かにこの間の模試の結果は前より少し落ちてたけど、それほど大したことじゃないし」
「何、言ってんだか。大したことだよ、それは。それに最初は澪も一人で勉強しろー、て私に言ってたじゃんかー」
「そ、それは。そうだけど…」
いきなり窓から侵入して驚いたからそう言ったのもあるし、一応それは言うのはお約束みたいなもので…。第一律が頼ってこなくてもちゃんと勉強しているかは、私なりに夏休みのときみたいに監視するつもりだった。でも一緒に勉強してみたら、律も意外に真面目にちゃんとしてたから今回は本気なんだなーなんて思って安心したんだけど…。
「でも、これから受験までまだ少しあるし」
「あ、まあそうだな。えーと、四ヶ月…はないか。三ヶ月半くらい?」
「…それまでずっと会わないのか。て、いうか!本当にちゃんと勉強するんだろうなー、律」
あと三ヶ月ちょっと。私が律の勉強見なくなった途端、律はサボりだすんじゃないかって、ちょっと怪しく思う。
…それに、それにやっぱり。
そりゃ会わないっていっても学校はあるから全然会わないて訳じゃないのはわかってるけど…。でもなんか、嫌だ。
内心でそんな風に思いながら正面に座る私の『いいなずけ』を見ると、彼女は無言で外を見ていた。
「おい、律。やっぱり本当はサボろうとしてるんじゃ…」
「澪、そろそろ頂上だぞ」

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プロフィール

書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
ようこそお越しいただきました。
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ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

百合的要素を含みますので嫌いな方や都合の悪い方は見ないことをお勧めします。

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原作者様、出版会社様、制作会社様とは一切関係ありません。

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