スポンサーサイト

Category : スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

短編 「それぞれの幸せ」

Category : それぞれの幸せ
ぽんぽこりっちゃん」の短編番外編です。
…許されるだろうか、この設定は。
なんて思いながらも楽しく書けたのでアップップ。
律x澪前提ですが、二人は出てきません。すいません。
もちろんパラレル、オリキャラが出てます。

それでもいいさ、読んでやるぜーという方は下記よりどうぞ。

それぞれの幸せ


この山を出た時は春になる少し前だったかしら。

緑豊かなこの山の木や花が鮮やかに今にも花開こうとする、そんな季節だった。
数年前のことを思い出しながら、山の奥深くに入っていく。
道なき道を掻き分けながら、ようやく辿り着いた山奥の洞窟。
「懐かしいわね…」
洞窟の周りは数年前とそれ程変わっていないような気がするけれど、正確には思い出せ
ない。今は夏の終り。残暑はまだ厳しいけれど、山の奥は深い緑が太陽の光を遮って
それほど暑さを感じさせなかった。
まだここに住んでいるかしら?
内心でそう思いながら洞窟の前に立つのは、一匹の黒に近い濃い茶色の犬だった。
目の縁に紅い模様があって、それが眼鏡をかけているようにも見える。
犬の名前は和。実は正確には犬ではない。狼と犬のハーフ。

「澪!澪ー!いるの?」
昔のままなら洞窟の奥に居ると思われる狼に声を掛けてみる。
「澪ー!私、和よ!」
数年前に別れた友人は何も答えない。
「いないのかしら…」
断りもなしで申し訳ないが、勝手に入らせもらおうかと悩んでいると洞窟からいくつかの
獣の気配が感じられた。澪の匂いとは違う。咄嗟に身構える和。
「誰?誰か居るの?」
誰か居るなら答えて。
警戒態勢を解かずに和は低く身構えながら暗い洞窟の先を見すえる。
ほんの少しの時が流れた後、洞窟の先からひょこっと何かが見えてすぐに隠れた。
「ん?」
今のは、…尻尾?
「誰?私は和っていうの」
別に危害を加えたりしないわ。ここに住んでいた狼の澪を尋ねてきたの。
和がそう言うと洞窟の中に居る獣の気配がざわめいたものになった。数匹の獣が何か話し
あっているような声が聞こえる。
「ねえ、出てこない?」
洞窟の奥に居る誰かに警戒させないように優しくそう言ってみた。

「あんた、誰!?」
洞窟の中から自分に問いかけてきたその声を聞いて、和はちょっと拍子抜けした。
まだ幼い子供の声だ。
「私は和。狼と犬のハーフで、ここに住んでるはずの澪という狼の古い友達よ」
和の言葉にまたざわざわと話合う声。二匹、いや、三匹居るようだ。
「貴方達は誰?ここに住んでいるはずの澪を知らない?」
洞窟の中からピタリと話合う声が止まった。
しばらくして恐る恐る出てくる影が一つ。
「え?」
暗い洞窟の影からぴょこっと飛び出た黒と茶色の丸い尻尾。
たぬき…?子供のたぬきの尻尾。
和が驚きながら少し近づこうとすると尻尾はひょいと洞窟の中に隠れた。
「大丈夫、何もしないわ。ねえ、出てきてくれない」
和のお願いにまた少し話し合う声が聞こえたが、警戒しつつも洞窟の中からぞろぞろと
現れた三匹の子供たちを見て和は驚いた。
「え!?あ、あの…」
「あんた、かーちゃん知ってるの?」
そう聞いてくる声はさっき洞窟の中から聞こえてきたのと同じだ。
和は自分の正面左に居るその子の姿をよーく見てみる。
狼のように尖った黒い耳。ふさふさした黒い体毛。ちょっとやんちゃなそうな顔つき。
「澪は私の友達よ」
「あなたは狼さん、犬さん?」
黒毛の子の隣、和から見れば正面右側に居るその子は、先がほんの少しだけ丸みがかって
いるけれど間違いない狼の耳と、ふさふさの体毛は茶色だった。
隣の子よりも穏やかな顔つきのその子も、同じように和に聞いてくる。
「私は狼と犬のハーフよ」
答えながら、和はその二匹の後ろに少し怯えながら隠れている子を見た。
耳も、ふさふさの体の毛も真っ黒だったけれど、他の二匹と違って狼の耳ではなく、たぬき
の黒と茶のストライプの丸い耳をしていた。
三匹共、耳や体毛に狼らしさがあるが、尻尾は全員黒と茶色のストライプ模様で大きく
丸い、間違いなくたぬきの尻尾を持っていた。

二匹の質問に冷静に答えつつも、和は考えていた。
洞窟から出てきた三匹の姿は和が想像していた「たぬき」とちょっと違っている。

…たぬき、じゃない?でも狼でもないような。犬、じゃないわよね。

和が今まで見てきた動物たちのどの分類に入りそうにない、不思議な姿の子供たち。
でも大きな瞳をくりくとさせて、好奇心一杯に自分を見ている小さな子供たちはとても
可愛らしくて、つい和はまじまじと三匹を見てしまう。
「えーと…」
しばらく三匹の子供たちの可愛さに見蕩れた後、さて何から聞こうか悩んでいた和は
ふと、さっきのやんちゃそうな黒毛の子が言った言葉を思い出した。

かーちゃん。え、それってお母さん?母親?
えええええ!?まさかこの子達…。

「あの、貴方達のお母さんのお名前は?」
なんとなく恐る恐る聞いてみる和。聞かれて三匹はそれぞれの態度で返事を返す。
「澪かーちゃんと律かーちゃん!」と、元気な黒毛の子。
「澪母さんと律母さんです」と、礼儀正しい茶毛の子。
「…澪ママ、律ママ」と、小さな声で二匹の後ろに隠れながら答えるたぬき耳の子。
やっぱりー!!
さっきまで二匹の後ろに隠れてほとんど口を開かなかった子からも重要な情報をご提供
いただき、内心で少し叫んでしまう和。それはいつも冷静な彼女にしては珍しいことだった。
「い、いつのまに…」
数年間山を離れていた間に自分には予想もできなかったことが、澪の身に起きていた
らしいことを知って和は顔には出さなかったが、内心ひどく驚いた。

澪が子持ちになっているとは。とろこで律って誰?

どこかで聞いたような、聞いた事のないような名前を思い出そうとする和。しかし思い
出せないので、目の前の子供達に聞いてみる事にする。
「澪、…ママは狼よね」
「そだぞー」
「そうです」
「…」
二匹の後ろに隠れている子はずいぶん大人しいようだ。なんだか澪に似ている。
「じゃあ、律ママは?」
「たぬきー」
「たぬきです」
「…たぬき」
真ん中の子も真面目そうな所が澪に似てるかも。一番左の子は間違いなくそのたぬきの
方に似たんだろう。
「ねえ、貴方達のお名前は?」
しばらく会っていなかった友人がいつの間にやら結婚(しかもたぬきと)していることに
かなり驚きながらも、とりあえずそう聞いてみる。
「俺、烏(うー)!」
黒毛の子。
「僕は龍(ろん)です」
茶毛の子。
「…」
もじもじとして何も言わない二匹の後ろに隠れている子。
恥ずかしがりやなのね、やっぱり一番澪に似てる。
その子の様子を見てそう思いながら、和はちょっとおかしくなった。
「あ、こいつは妹の茶ね。かーちゃんたちは茶々(ちゃちゃ)って呼んでる」
黒毛の烏と名乗った子が彼女に代わって名前を教えてくれた。
「へー。茶々ちゃんね。可愛い名前…ん?」

うー、ろん、ちゃ?

「僕たち三匹兄妹なんだけど、四匹だったら『爽・健・美・茶』にするつもりだったって
母さんが言ってました」
「わかったかー!」
「…ええ、まあ」
子供たちの名前を決めたのが狼の方じゃなくて、たぬきの方だってことだけは間違いなく
理解した和。澪、反対しなかったのかしら…。

「とりあえず、澪は、貴女たちのお母さんはここに住んでいないの?」
「僕たちここからもう少し下の山の中に住んでるんです」
茶色の瞳をした龍がそう教えてくれた。
「そう、引っ越したのね」
澪はここからほとんど動こうとしなかったのに。
「じゃあそこに澪は居るかしら?」
「今は居ないよ」
黒い瞳をした烏が素っ気なく答える。
「え、じゃあどこに居るの?」
子供たちの話では二人は明日開催される隣の山でのライブの為にそちらに向かっている
途中、との事だった。
「ライブ?」
「律かーちゃんはドラムで、澪かーちゃんはベース弾いてるんだ!」
すっごい上手なんだぜー!と自慢げに鼻をならす烏。
「澪がバンドしてるの…」
さっきから和は驚きの連続だった。
あの引っ込み思案で、大人しくて、目立つの大嫌いだった澪がライブ演奏するなんて。
数年会っていない間に澪を取り巻く環境が彼女を大きく変えてしまったのだろうか。でも…。
「ねえ、澪は」
もしかしてそれは…。
「貴方達のお母さんは、そのたぬきのお母さんと仲良くやってるの?」
けっして悪いことではないのかもしれない。

和の質問に三匹は一瞬きょとんとした顔をした後、すぐに何かを思い出したように、
三匹は笑いながら勢いこんで話をし出した。

律かーちゃんはいつも澪かーちゃんをからかってるー。
いつも律母さんは澪母さんに殴られてます。
…ママたち、よく喧嘩、してる。

「…幸せなのかしら」
子供たちの話に少し心配になっていると、二匹の後ろからちらちらとこちらを眺める大人しい
子だぬき(正確にはたぬきと狼のハーフ)の茶々に気付いて、和はにこりと笑いかけた。
「おいで」
手を広げると、茶々は二人の兄をちらりと見た後、おずおずと和の元にやってくる。
和は優しくその小さな体を抱きあげた。
「…あの」
龍よりも明るい茶色の瞳を和に向ける茶々。
「和よ」
「…和おねーちゃんは澪ママのお友達?」
「ええ。とても古い友人よ」
答えながら昔のことを思い出す和。

この山を離れる時、和はこの洞窟に住んでいた気の弱い菜食主義の狼を一緒に誘った。
狼なのに血が大嫌いで群れから離れて一人になった澪。純粋な狼ではない、狼と犬との
ハーフのために群れになじむことができなかった和。
そんなどこか似たような境遇だったせいか、二人は気が合った。
結局澪は「ここに残る」と言って断ったのだけれど。

「ママたちは優しい?」
「…うん!」
嬉しそうに笑うこの子の笑顔を見てやっぱり澪は今、幸せなのかもしれないと思う。
「…あのね。ママたちよく喧嘩するけど、本当はすごく仲良しなんだよ」
私、知ってるんだー。
茶々は内緒話をするように和の耳元に囁くようにそう言った。
「…そう」
ふさふさの毛を撫でてあげると、嬉しそうに丸いたぬきの耳をピクピクと動かす可愛らしい
茶々の仕草に和から笑顔が零れる。
いつのまにか二匹の子供たちも和の足元にくっついている。
「烏も龍も、ママたち好き?」
「好きー!」
「好きです」

かーちゃん達、たまに怒るけど、いつもはすっげー優しいしー。
いつもおいしい御飯作ってくれます。

指を折り曲げて数えるように言うニ匹が微笑ましくて、和は体をかがめて交互に二人の頭を
撫でてあげる。笑顔がなんとも可愛らしい、たぬきと狼のハーフである小さな子供たち。

「そういえば、ママ達が隣の山にいったのなら貴方達はどうしてるの?」
ハッとして和は心配になって子供たちに聞いてみる。もちろん澪たちが子供たちを放った
らかしにして行ったとは思えないけど。
「ムギちゃん家に居るの」
茶々が教えてくれた。
「ムギちゃん?」
「ここから少し歩いたところにある隣の草原に住むヤギさんです」
龍が指を差し方向には、ヤギや羊の群れがいる草原があったことを和は思い出した。
そのヤギのムギも澪たちと一緒に隣の山に出かけていて、三人は草原を管理する「さわこ
さん」という犬に預けられている、と和は三匹のそれぞれの説明で理解した。
「じゃあ、なんでここの洞窟に?」
「烏が探検しようって…」
「だって今しかないだろー!」
かあちゃんたちが居たら反対するし。
それにここは元は澪かーちゃんの家だったんだから俺たちのもんだろ!
両手をあげてここは自分の縄張り、とばかりに宣言する烏。
「…でもママたちがここに来ちゃ駄目って」
茶々が控えめにそう言った。
深い山奥にある洞窟。確かに子供たちだけでは何があるかわからない。
「大丈夫だよ!」
「でもそろそろ帰ろうよ、烏」
「えー!?」
龍の言葉に不満一杯といった感じの烏。
「私、もう帰りたい…」
ここらへんちょっと暗くて怖いし、ばれたらママに怒られるよ…。
少し涙目になった茶々がそう言いながら和にしがみ付いてくる。
「それにそろそろ戻らないと、さわこさんも心配してるかも」
龍がちょっと不安げな顔をして烏を見る。
「うーん」
「もう帰りましょう、烏。充分楽しんだでしょ」
妹が泣いてるわよ。
茶々をあやしながら烏を見つめる和。
「わかったよ」
「ありがとう、途中まで送るわ」
茶々を胸に抱きながら、二匹の狼とのハーフの子だぬきたちと一緒に、山奥から草原に
向かう和。笑ってはしゃぎながら前を歩く元気いっぱいの二匹を見て和はなんとも心が
なごむのを感じられた。

私と同じように一人ぼっちだった澪。
でも今は違うようだ。こんなにも可愛い家族が三匹も出来たのだから。
それにしても同じこの子たちの母親であるたぬきとはどんな相手なんだろう。
少なくとも三匹の名前の付け方からして、相当おもしろいというか、変わった相手である
ことは想像に難くない。まあ、それでも。

前を歩く二匹は元気一杯にはしゃぎまわっている。時折思いついたように、
「茶々!この花綺麗だ、やる!」
妹に花を突き出して渡す黒毛の兄。
「ありがとう、烏」
「茶々。喉渇いてないか?」
肩に背負っていた筒を取り出して妹に聞いてくる茶毛の兄。
「大丈夫、ありがとう、龍」
二人の兄の優しさに包まれて花を抱えて嬉しそうな妹。
仲の良い兄妹。子供たちの話では喧嘩する程仲のいいらしい?両親。
「…幸せそうでよかったわ」
「なーに?」
和が何気なく呟いた言葉に茶々が可愛らしく聞いてくる。
「ううん、なんでもないの」
澪に会えなかったのは残念だけど。
会えない間、忙しい日々の中でも元気にしているだろうかと心配していた古い友人が
思ったよりずっと幸せになっているらしい事がわかって、和の心に喜びが温かな気持ち
となってあふれてくる。

また来年にはここに一度戻ってきて、彼女に会ってお祝いの言葉をあげよう。

「ほら、あそこだよ!」
木々の間を抜け少し山の高みから烏が指し示す場所を見ると、そこは広い草原。
「じゃあ、行きましょうか」
三匹を草原まで見送ったら山を降りよう。下では私の家族が待っている。
山を離れてからいろいろあったけど、澪も私もそれぞれの幸せを掴んでいるのなら、
それは素晴らしいことだわ。

和はそう思いながら柔らかい小さな茶々の体をもう一度抱き締めるのでした。

end


子供ネタは許されるでしょうか。でも書いてて楽しかったです。

りっちゃんも澪ちゃんも子供たちを溺愛してます。さわこさんに預けるさいも
澪ちゃんもう泣き泣きです。りっちゃんは一見子供達にドライなように見えて
実は子供たちをすごく愛していますが、未来の山のリーダーになってもらうべく
心を鬼にしてさわこさんに預けました。

互いの教育方針の違いでたびたび喧嘩する二匹。
でも本当は茶々が言っていたようにラブラブ夫婦

短編「それぞれの幸せ」を読んで頂きありがとうございました。
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
ようこそお越しいただきました。
こちらはけいおん二次創作SSサイトです。

ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

百合的要素を含みますので嫌いな方や都合の悪い方は見ないことをお勧めします。

当サイトはリンクフリーですのでリンクをしていただけると嬉しいです。相互リンクもよろしければ大希望です。

当サイトはまんがタイムきらら原作、アニメ「けいおん!」中心の非公式サイトです。
原作者様、出版会社様、制作会社様とは一切関係ありません。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
けいおん時計
リンク
ランキング

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。