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いいなづけ 第十作目 - あとがき -

Category : SS( いいなづけ 【10】 )
とうとう『いいなづけ』シリーズも十作目になりました。
感慨深いです。こんなに続ける事ができるとは…。ヒャホーイ。
ひとえに読んでくださっている皆様のおかげです。

澪ちゃんは澪ちゃんで実はけっこう不安で一杯だったりするのですが、
でもやっぱり律ちゃんを信じてるんです!ステキ。
『いいなづけ』シリーズは基本、甘甘路線です。ソノツモリデス。

さわちゃんごめんね。
でも本当はさわ子先生はモテモテな女性だと思います。
そして律ちゃんのお母さんは相変わらずです。

「いいなづけ 3年生の春休み 秋山澪の場合」読んで頂き
ありがとうございました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

いいなづけ -08- 3年生の春休み 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【10】 )
「やっぱり恋は順風満帆が一番よね~」
前回の部活同様、さわ子先生を含む軽音部の全員がムギの紅茶とケーキを楽しんでいたとき、先生がこの間とは180度違う意見を漏らした。
「はあ?」
「さわちゃん、障害とかハプニングは?」
律と唯がそれぞれ先生見ながらそう聞いていた。
「そんなの面倒くさいわよ~」
先生の変わり様にムギを抜いた全員が呆気に取られていた。

「先生、前に知り合った若いお医者様からメールが来たんですって、今度お会いしたいって」
本日一番始めに部室に来ていたムギが上機嫌だった先生から聞いたらしくひそひそとした声で私達に教えてくれた。
「なんてわかりやすい…」
「障害もハプニングもなく順風満帆にお医者様の奥様になりたいんですね、きっと」
私と梓が呆れながらそう呟いた。
「先生、頑張って下さいね」
「ムギちゃーん」
激励するムギ。そんなムギに抱きつく先生。前回と同じパターンだけど内容が随分違うな。

「うふふ。律ちゃんも澪ちゃんもお幸せにね!」
「も」って。もうお医者様の妻になる気満々ですね、さわ子先生。
「いやあーねー。そんな肩書きだけで相手を見てるわけじゃあないのよ、私は」
前にお話した時、いい人だなあって思ったからでー。
少しだけ頬を染めながら体をクネクネさせる先生。
「イマイチ説得力ねえー」
律も私や梓同様、呆れたような顔をして突っ込む。
「あら、本当よー。もちろんこれからお互いを深く知っていくということで…」
「さいですか」
これ以上突っ込むことはせずに紅茶を飲む律。
「なんなら二人の結婚式には仲人やるわよー。その頃には私も結婚してるでしょうから」
うふふと笑う先生。
「…なんて楽観的」
自分の正面に座る先生を見て感心している梓。
「ほほほ。まかせて、その時は…」
先生が話をしている途中で携帯に電話を知らせる曲が音楽室に流れた。
「あ、彼からだー」
るんるんという効果音が聞こえてきそうな先生の顔。
ちょっとごめんね、と音楽室を出て行く先生にヒューヒューとからかいの声を上げる律と唯。
「まあ、うまくいってくれればいいけどな」
紅茶を飲み干した後、律がそう言った。
「そうですね」
梓も律の言葉に同意する。なんだかんだいっても皆、先生の恋を応援しているのだ。
「とにかく今日こそばっちり練習しましょうね、先輩達!」
梓が勢いこむようにそう言った。
「そうだな」
「まあ、さすがに今日はしないとな」
律と私が梓の言葉にちょっとだけ苦笑しながらも同意していると、突然ドアがバンと大きな音を立てて開いた。
「ふぇ?」
フォークを口にくわえたまま唯が声を上げた。
「先生…?」
ムギがドア前で仁王立ちしている先生に声を掛ける。
片手を開いたドアに当てながら顔を俯かせている。
先生を除く音楽室にいる全員の脳裏に「これはまずいのでは」と恐怖に似た戦慄が走った。
「ど、どうした、さわちゃん」
全員が押し黙る中、無言で立ちすくむ先生にそう聞いた律。
「彼が…」
「「か、彼が…?」」
地の底から響くような低く静かなその声に全員で後ずさりしつつも聞きなおす。
「彼女のことで相談に乗って欲しいって…」
教師としてご意見をお聞きしたいってさー、さー、さー、ああーなんだそりゃ!!
きーと叫ぶさわ子先生を見ながら私たちは、はあと深い溜息を吐いた。

涙目になりつつもなにやら叫ぶ先生をムギが宥めるのにまた時間がかかるだろう。
そして練習時間が少なくなって、今度は梓を宥めるのに時間がかかるだろうことを想像して、私はもう一度深く溜息を吐いた。
「単なる相談相手?」
そんな私の憂鬱さなど少しも気付かず、相変わらず天然な発言をする唯と「なーんだ、ただのさわちゃんの勘違いかー、つまんねー」と余計な事を言ってますます先生の神経を逆撫でする律。
私は昨日の反省の心など空の彼方に放り投げて、律の頭に勢いよく拳骨を落とした。

「澪のDV!暴力反対ー!!」

end

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ジャンル : 小説・文学

いいなづけ -07- 3年生の春休み 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【10】 )
「見てないんだから!」
「わかったよ」
律はベットから起き上がって座り、携帯に手を伸ばす。携帯を確認していた律が私の方へ向いて「メールくれたのか」と聞いた。
「そう。返答なかったから来てみたら律、寝てるから」
そっか、と一言でまた携帯を確認する律。しばらくして携帯を閉じる音がした。
「…誰かから来てた?」
「別に」
さっきは未遂に終わったけどやっぱり気になる気持ちはある。私の質問に素っ気無く答える律の横顔を見ていると、また不安な気持ちが湧き上がる。
「澪」
「え」
「別に澪なら見てもいいぞ、携帯」
隠す事なんてねーもん。
律が私を見ながら笑ってそう言った。
「…」
「ほら」
私の左手に携帯を渡す律。その表情はいつもの、私を安心させてくれる笑顔。
その笑顔を見て私は少しだけ顔を俯かせた。顔が紅くなってくるのを感じる。
「なんだ、見ないのか?」
「…うん、いい」
私は携帯を律に返した。
「そう?まあ、どっちでもいいけどさ。ところでなんで顔俯かせてんの?」
みーおーしゃん、どうしたんですかー?
おちゃらけた声で律が聞いてくる。私はそれには答えなかった。でも答えなくても
律にはわかっていると思う。だって今、私の顔はとても紅くなっているだろうから。
律はそれ以上は聞いてこず、またもや大きな欠伸を一つ噛み締める。

「いつから寝てたんだ」
私はまだ顔を俯かせながらもそう聞いてみる。
「うーんさっきお菓子食べた後だから、そんなに寝てない、ついさっき」
「…食べてすぐ寝たら太るぞ」
「えー、澪しゃんじゃあるまいし、私はだいじょーイデ!」
最後までいい終える前に私は律の頭に拳骨を落とす。
「なにすんだよー!」
「うるさい、バカ律!」
文句を言いつつもあー、またやっちゃったと私は内心で後悔していた。
「暴力反対!DVだー!」
「うう…」
いつもなら律のそんな言葉にさして気にしたりしないのに。今日の私は不安定だった。
なんとなく律から視線を逸らした。つくづく悪いくせだと思うけどもうなんだか
泣きたい気分になっていた。
「澪?」
「なんでもない」
様子がおかしい私を見て律が不思議そうに聞いてきたけれど、私は素っ気無く答える。
別に泣くほどのことじゃあないじゃないか、本当に我ながら面倒くさい女だなと思う。

律はしばらく何も言わなかったけれど、不意に私の体を抱き締めた。
「律?」
「澪、私はまだ眠い。寝るよ。澪も寝よう」
そう言って静かに私をベットに押し倒した。
「ちょ、律!?」
「澪しゃんはあったかいなー、はああ、眠い。おやすみ」
「ちょ、ちょっと!?」
抱き枕みたいに腕の中に私を閉じ込めると律は目を閉じた。
「DVな澪しゃんも好きだぞ~」
私はマゾだからな、とおばかな事を言う律の声は眠そうだ。
「な、何言ってんだ!?」
「はあ、動くなよ、澪。眠れないだろ」
離れようとする私の体をさらに抱き締めて律は私の額に軽くキスをした。
「な!?」
突然キスされて驚いて少し声をあげる私に構わず、片手でゆっくりと優しく
私の髪を梳いていく。もう片方の手は毛布を私にかけてくれた。
「律…」
しばらく私の髪を撫でていた律の手が静かに止まった。律の規則正しい寝息が
聞こえてきた。もう寝たのか。
「…バーカ」
私は律が起きないようにとても小さい声でそう言った。

自分の事には鈍い律。他の人には鋭い律。
でも私の気持ちには他の誰よりも、私よりも鋭くなる律。
やっぱり律は鈍いままでいいかも。なんだか矛盾してるけど。
私はなぜかこみ上げてくる笑いを必死で堪えた。目を閉じてじっとしていると律の体温と寝息が私を眠りに誘ってくる。
さっきまでの不安も恐怖も全部無くなっていくような気がする。
律の腕に包まれながら私はここに閉じ込められてもいいと思った。
それはさっきも思っていたことだった。でもすぐにその考えを打ち消した。

ねえ、律。
私はやっぱりこれからも律と一緒にいたい。
だから一人でも大丈夫なように強くなる努力をしようと思う。
律に甘えてばかりじゃなくて、律を助けることができるくらい。
…どうすればそうなれるのかは、まだはっきりとはわからないけど。
貴女の『いいなずけ』が決して貴女の重荷になるのではなく支えになるように。
ごめんね、律。それまで大変だろうけど、もう少しだけ我慢して。

律の腕を枕にして少しうつらうつらとし始めたとき。
部屋のドアが開いた音がしたけれど私は眠くてあまり気にしなかった。

しばらくして起きた私達は律のおばさんに勧められて、田井中家で夕食を一緒に取った。
律や聡と一緒に話をしながら夕食を頂いていると、不意におばさんが私をみて「大丈夫よ、澪ちゃん。責任はちゃんと取らせるから」とにっこり笑っていうので私は「は?」と意味がわからず答えた。そんな私をおばさんはますますにっこりと笑って見つめていた。

次の日、部活があるため一緒に学校に向かう律の顔はなぜか少し疲れているようだった。
私が尋ねても「母さんが…、いや、何でもない」と言ってそれ以上は何も答えなかった。

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いいなづけ -06- 3年生の春休み 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【10】 )
締まりのない顔で眠る律を見ていると急に衝動的な気分にかられてベットに近づいた。
起こさないように注意しながら私は眠る律のすぐ側に顔を寄せる。
「…律」
眠っている相手に私は何をしようとしているのだろう。そうは思っていても私の意思を無視して体は止まらない。ただ胸の動悸が激しくなるのと顔が熱くなっていることだけは感じている。静かな寝息を放つその唇に自分の唇を触れ合わせようとした。
「う、うーん」
「ひゃ」
律がちいさく唸り声をあげてまた寝返りを打った。突然の事に私は小さな叫び声をあげてしまい、慌てて片手で口を塞いだ。しばらく息を殺してその態勢で固まる。
律の規則正しい寝息が聞こえてくる。

ああ、びっくりした。
私はほっとしてようやく体の力を抜いてベットの側に座り込んだ。
律の背中を見ながら私は少し笑った。本当にさっきから私は何をやってるんだろう。
ベットの上に置いた自分の手を枕にして目を閉じ、律の寝息を聞いているとまた思い出してしまう。

-でもやっぱり私は澪にいろんな人と会ってその中で楽しい思い出とか作って欲しい。

律はとても優しい声で私の耳元でそう囁くように言った。彼女が私のことをとても想ってくれていることがわかるような、温かな吐息すら感じる声だった。でも。
律のそんな気持ちに気付いていても、それが決していいことではないことだってちゃんと頭で理解していても。私はもし律が「行くな」と言えばきっとどこにも行かなくなる、そんな気がしていた。それでいいと本当は思っていることも。

本心では律にそう言って欲しいと思っている自分がいる。それがなんだか怖かった。

どうして?
私は軽音部の皆が大好きだ。皆ともっと仲良くなりたいし、遊びにだって行きたい。
この間遊んだクラスの子たちだって好きだ。皆優しくて親切だった。うたたねした私が風邪をひかないように毛布をかけてくれて、起きないようにとゲームを止めて小さく皆でおしゃべりしていた、と後で和に教えてもらった。
ファンクラブの皆だって私を応援してくれている。
人見知りで怖がりな私の方がみんなにたくさんの迷惑をかけているだろうに。
皆が嫌いなはずがない。心から感謝している。なのにどうしてそんな事を思ってしまうのだろう。
こんな気持ちは律にも私にもいいはずがない。

皆が私を誘う時、律に確認をとっていることは知っている。前にそれでちょっと律の投げ遣りな態度に腹が立ったことがあったけど…。律はいつでも「私の事は気にするな」と皆に伝えている。皆が律に確認すればするほど、反対に律は『いいなずけ』だからって無理に束縛しないようにと努めているのになんとなく私は気付いていた。
でも律がそうしようとすればするほど私は…。
「うぅん」
律の寝息が途切れた。
「律?」
目が覚めたのかなと、思わず名前を呼ぶと少し寝返りをうってこちらを向いた律の目が何度か瞬きをしながら開いた。
「んん?」
「起きた?」
律の声はまだ眠そうだ。目もまだ完全に開ききってない。
んー、とまた言葉になっていない声を上げてまた目を閉じた。
「あ、また寝た」と思ったら今度は勢いよく目が開いてしばらく私を見つめていた。
「…ん?」
「おはよう、律」
「…ああ、おは」
よおおおお!と叫んで律は飛び上がって起きた。
体にかけていた毛布を抱き締めてベットの端、部屋の壁に体を寄せる。
「そんなに、驚かなくても…」
人をお化けみたいに。
律は私の抗議にも耳を貸さず少し慌てていた。どうでもいいけどなんでそんなに距離を取ろうとするんだ律。こんな狭いベットの上でそんなに壁の方によっても無理があると思う。

「な、なんだ、来てたのか」
「来てたら悪いか。律だって私が寝ててもお構いましに部屋に入って漫画読んだりしてるだろ」
「…そ、そうだけど」
そう言って私から顔を逸らす。起きたばかりとはいえ、なんで私の顔見てそこまで驚かれなきゃならないんだ。あ、もしかして…。
「律、なんかやらしい事考えたんじゃないだろうな」
「な!?」
エッチな奴、と呆れたように呟くと律は顔を真っ赤にして反撃してきた。
「だ、誰がだよ!それは澪の方だろ!人が寝てる間になんか変な事しようとしたんじゃないだろうな!」
「へ、変なことって何だよ」
え、もしかして起きてた?とさっきの行動を思い出して焦る私。
「えーと、そ、それはつまり」
言い淀む律はテーブルの方に目を向けると携帯を見てはっとしたような顔をした。
「人の携帯見たりとかさー」
急に顔をニヤニヤさせる律。
「そ、そんなことするか、バカ!」
良かった。起きてない。
「そうかー、だって携帯もっとこっちに置いてあったはずだ」
「う、嘘つけ!ここに置いてあったよ、最初から!」
そう言いながらも確かに最初にあった位置より少しずれているかもしれないと思っていた。私が携帯を一度持って適当に置いたからだ。
「本当かー?」
「本当だ、バカ律!」
確かに一瞬見ちゃおうとか思ったけど、見てないんだからな、未遂だ、未遂!
どっちも未遂!

「ふーん」
私の言葉に律は納得していない感じだったがとりあえず追求を止めた。
ふぁあと一つ欠伸をして両手を挙げて背を伸ばす。

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ジャンル : 小説・文学

いいなづけ -05- 3年生の春休み 秋山澪の場合

Category : SS( いいなづけ 【10】 )
今日は部の練習はなく、私は朝から家の用事で親戚の家に行っていた。
夕方には家に戻ってきて律にメールをしてみたが返答が来ない。
電話をしようかとちょっと悩んだが、私はさっき脱いだ上着をもう一度着る。
「律の家に行ってくる」
玄関で台所にいるママにそう言ってまた外へ出て行った。

「律?入るよ」
おばさんに挨拶していつものように階段をあがる。他では何の役にも立たない能力だけど、いつものエスパー律なら私が来たことにすぐ気付くはずだ。
しかしドアを開けて部屋に入っても返答はなかった。
「…なんだ、寝てたのか」
道理でメールに返事がないわけだ。ベット横のテーブルに携帯が置いてあるが、メールの着信音では目覚まし代わりにならなかったみたいだ。
なんとなく「さっきの私のメール届いているのかな?」と思い、律の携帯を開こうとしてはっとなった。これはプライバシーの侵害というやつでは。

大慌てで私は携帯をテーブルに戻した。前にTVかなんかで見た場面を唐突に思い出す。
恋人の携帯をこっそり見て、浮気してないか確認するっていうあれ。
「いやいやいや、やっぱそれはちょっと駄目だよね」
そんな事をするのはとても嫉妬深いというか、縛りの強い彼女というか。
とにかくそれはよくない、うん。
携帯から律へ視線を移動させる。移動した視線の先に眠る律の背中。
いい事ではないけれど…。私をまた律から携帯へと視線を戻した。

- ええ、彼がお風呂に入っている間に携帯を確認してみたら、中には知らない女の名前がいっぱいあって…。-

唐突に私の頭の中で顔にモザイクが入りボイスチェンジャーで喋る女の人が、マイクに向かって話している映像が鮮明に浮かび上がった。てゆうかどこで見たんだっけ、こんな映像…。
「まさか」
普段ならこんな疑惑が私の頭の中にかすめても携帯を見てみようなんてことはやっぱりしなかったと思う。でも…。
春休みに入る少し前、律は私にこう言った。

- 二人でいるのは当たり前みたいになってるけど、でもいつまでもこのままってわけにはいかない。

律が真面目な顔でそう言ったとき私は本当にびっくりして、ついで泣きそうになった。
それがもろに表情に出ていたのか私を見てすぐに彼女は「誤解するな」と言って否定してくれて本当にほっとした。でも私がほっと胸を撫で下ろした後で、すぐに律はいつも二人一緒でってわけにはいかなくなる、…とも言った。
それはたぶん正しい。ううん、当たり前なのだ。
小中高と同じだった私たちは大学まで一緒に行けるかどうかは微妙だった。
そもそも律は大学に進む気があるのだろうか?

私たちは親同士が決めた『いいなずけ』だ。親同士が決めたと言っても一応私達は自分自身の意思でも『いいなずけ』になったのだ。…まあ小学生の時の話だけど。
最近私は『いいなずけ』という立場はなんだか曖昧のような気がしていた。
一応将来を誓っているわけだけど、なにか法律的に拘束力があるわけじゃないし(ないよね?)その気になればいつだって解消できるのだ。
でも私達が『いいなずけ』だと皆が知っているからこそ私も学校ではあまり告白されることはなくなったし、…律だって。
律を好きな子たちも私に遠慮してきっと何も言ってこないのだろうと思う。
そういう意味では高校では『いいなずけ』の関係に感謝しているし、隠さなくて良かったと本当に思うんだけど…。

律はあいかわず夢の中だ。ちっとも目を覚ましそうにない。
私は一旦テーブルの上に戻した彼女の携帯を再度手に取った。
そのままそれをじっと見つめる。

私は律に甘えすぎていると思う。
いつだって律は優しいからつい甘えてわがままを言ってしまう。
ちゃんとそのことは自覚していた。ずっと前から。
この間だって私からメールと電話をして、喋り声で皆が起きたのだから律に怒るなんて八つ当たりもいいところなんだってのもちゃんとわかっている。
わかっていても律はいつだって私の馬鹿馬鹿しいくらいのつまらない八つ当たりに動揺したり怒ったりしないから、「はいはい」っていつも笑ってくれるから。
ちょっとからかったりするときもあるけど、うまく私の気持ちを切り替えてくれる。
それが私にはとても嬉しくてくすぐったい。そう、嬉しいけど。
…そんなの、やっぱりよくないよね。
律の「このままってわけにはいかない」と言った言葉を思い出すと私は恐くなる。

もう澪の世話なんてうんざりだよ。

本当はそんな風に思われているのではないか、そう思ってしまうのだ。
もちろん律がそんなつもりで言った訳じゃないことはわかってる。
ちゃんとわかっている。なのに思い出すととても不安になる。
この間はそんな意味じゃなかったかもしれない。でもこれからは?
このまま律に甘え続けていたら本当にそう言われてしまうんではないかと考えると私は怖い、不安で堪らなくなる。
そんな事を考えるとますます余計な事を思い出してしまう。
あのお菓子をあげて照れていた、律より小さくて可愛い彼女なら私みたいなわがままは言わないだろう。律だって理不尽な八つ当たりやわがままを言ったり、しょっちゅう怖がったり泣いたり、口より先に拳骨が出てくる面倒くさい私より、彼女の方がいいと思うかもしれないじゃないか。
いつのまにか携帯を持つ手が少し震えていた。

「う、うーん」
「!?」
突然律が少しだけ声をあげて寝返りを打った。私はびっくりして声を上げそうになって片手で口を塞ぐ。しばらくしてまた穏やかな寝息が聞こえてくる。
ほっとして一瞬固まった体から力を抜いていく。同時に握り締めていた携帯から指の力が少しずつ抜けていく。私は少しおかしくなって声を出さないように笑いながら携帯をテーブルに置いた。
「なんだか馬鹿みたいだ…」
ちょっと自嘲気味にそう呟いて私は律を見た。さっきまで背中を見せて眠っていた律が仰向けに眠っている。小柄な体。まだまだ起きそうにない、規則正しい肩の揺れ。

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プロフィール

書き人知らず知らず

Author:書き人知らず知らず
ようこそお越しいただきました。
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ジャンルは『けいおん!』律澪
律澪はジャスティス。
いい言葉ですね。

百合的要素を含みますので嫌いな方や都合の悪い方は見ないことをお勧めします。

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当サイトはまんがタイムきらら原作、アニメ「けいおん!」中心の非公式サイトです。
原作者様、出版会社様、制作会社様とは一切関係ありません。

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