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短編 「ねえ、王様」

Category : ねえ、王様
短編です。
「Summer time」の続きで書いたわけではないんですけど。
なんかそれっぽくなってしまいました。
童話の教訓てわかりやすそうでなんか微妙だと思います。
律x澪でまだ二人は幼馴染で親友の関係です。

読んでやるぜーという方は下記よりどうぞ。


ねえ、王様

王様の耳はロバの耳。
そういえばそんな童話あったっけ。

部屋の中で束ねられ、積み重なった絵本の中から一つ手に取ってパラパラとページをめくる。
王様の耳がロバの耳である事を黙っているように命令された理髪師だけど、どうしてもしゃべりたくてたまらなくて大きな穴を掘ってそこに叫ぶ。
そんな話だったかな。

それにしてもどうしてわざわざ穴掘るかね?
子供の頃そんな感想を持ったような気がする。
王様の秘密を漏らすと確か殺させるんだっけ。だから言えない。でも言いたい。
それで誰もいない場所で穴掘ってそこで叫ぶんだ。
でも王様にばれちゃう。お約束だな。
だから言っちゃ駄目なんだよ、理髪師さん。穴空けたからってなんの意味もないよ。
たとえ誰もいないとわかっていても言っちゃ駄目なんだ。
口に出したらいけないんだよ。

***

裸の王様、か
懐かしいな。そういえばそんなそんな話あったっけ。

押入れを整理していたら何冊か古い絵本が出てきた。ちょっと埃が付いちゃってる。
ふっと息をかけて簡単に本の表紙を乾いた雑巾で拭く。
小さい頃読んだな。絵が可愛い。
おしゃれ好きの王様が二人の仕立て屋に騙されて、見えない服を見えると思って街を裸で歩いちゃうお話だよね。

恥ずかしいよね、それ。
騙された王様にも悪い所はあったけど、やっぱりちょっとかわいそう。
周りの皆も言わなかったわけだし。
でも「王様が裸だ!」て子供に言われて内心ものすごーく焦ってても、そのまま前よりふんぞり返ってお披露目を続けちゃう王様ってすごい。
子供の頃そんな感想を持ったような気がする。
子供は純真で正直だから騙されない、てことなんだろうけど。
でもやっぱりある意味、残酷な一言なんだと思う。

***

「まーだこんなの持ってたのかー、澪」
「持ってたって言うか、押入れの奥に入れて忘れてたんだよ」
久しぶりに部屋の模様替えでもしようかな。
そう思いった私は部屋にある物を整理して途中、押入れの中から昔買ってもらった絵本やおもちゃが出てきた。
「うーん、懐かしいな」
当時小さな女の子に人気があったアニメの絵が入ったトランプを見て律がそう言った。

「へー、そんなのも残ってたんだ」
私が押入れを整理し始めると、律が相変わらず連絡も無くやって来て部屋に入ってきた。
そしてそのまま手伝う様子もなく、私が押入れから出したダンボールに入っているおもちゃを取り出して懐かしそうにそれを見る。
私はいくつかある絵本を軽く雑巾で拭いて束ねていく。
一通りのおもちゃを見ると、今度は束ねた絵本から一冊取って律はパラパラと読み始めた。
「おい、もう整理してんだから」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ」
ふうと一つため息吐くと、私もなんとなく絵本を一冊手に取って読んだ。

「律」
しばらくして私は絵本を見ながら律の名前を呼んだ。
「んー」
「昨日どこへ行ってたんだ?」
「え」
「部活の帰りにだよ。ちょっと寄る所があるって急に走って行ったじゃないか」
「ああ…」
律は絵本に目を向けたままだ。

「大した用事じゃないよ。中学ん時の友達に借りてた漫画を返しに行っただけ」
「…そう」
「前の日にメールで催促されちゃってさ。しゃーねーって感じ」
「ふうん」
「それより今日は澪の家カレーだろ」
「よくわかるな」
「だってもうニオイしてるじゃん」
いいなーという律に「じゃあ食べてけば」と言った。
「えっ、いいの?」
「…今さら何遠慮してんだか。別に食べてけばいいよ」
マ、お母さんに言っとく。私がそう言うと「やったー」と喜ぶ律。
律も私もしょっちゅうお互いの家で御飯を食べてるから、ママも慣れていてさして驚きはしないだろう。

「さて。ほらほらうちのカレーが食べたかったら部屋の模様替え手伝え、律」
私は立ち上がって律から絵本を取り返す。
「へいへい。なーにすればいいんですかー」
律はちょっと面倒くさそうな顔をしたけど、とりあえず立ち上がって両手を頭の後ろに回してそう聞いてきた。

「んー、とりあえず…」
私は律に適当な指示を出しながら、さっきまでの会話を思い出す。
ねえ、律。
もう私は大きくなったから、童話に出て来た子供のようには言えないんだ。

「律、それは嘘だよね」って。

そう律に言ってはいけないような気もするんだ。
それに私がそう言ったって律はきっと何も変わらない。
それどころかいつものように笑っておちゃらけてごまかして、何事もなかったようにするんだ。
子供に言われてもそのままお披露目を続けた裸の王様みたいに。

王様を騙したのは仕立て屋。でもそれに騙されたのは王様のせいでもあるけど。
律が私に嘘をつくのはなぜだろう。律は誰に騙されているんだろう。
もしかして律は、彼女自身を騙しているのかもしれない。
…どうして私はそんな事を思ってしまうのだろう。でも時々そんな風に思う時がある。
でもやっぱり私はもう子供じゃない。だから言えないの。
「律、それは嘘だよね」って。

澪に言われる通りもういらない物をダンボールに詰めながら、私はさっきの会話を思い出していた。心の中の何かが少しだけさわめくように揺れ動く。

また澪に嘘を吐いた。

でもそれは仕方が無い事だ。理髪屋と同じだよ。
それは言ってはいけないから。
昨日澪と学校から帰る途中、澪がこの間夏期講習で一緒だった男に偶然会って声を掛けられて少しだけ話をした、そんな話を聞いただけで妙に心臓の動きが早くなってなんだか苦しくなってきて、これ以上澪と話をしたくなくて「ちょっと用事があるから」と言って、帰る道とは反対方向に走っていった私。

「急に声を掛けられて驚いたけどなんとか話せたよ。まあ世間話程度だけど」
そう言って少し笑う彼女の顔が見たくなかったなんてさ。くだらない。
つまらないことだ。でも何かを言ってしまいそうになった。だから逃げた。
穴なんて開けても駄目だ。口に出したら駄目なんだ。

…そういえば結局しゃべったのがばれた理髪屋は、最後どうなったんだろう。
それは絵本に書いてあったかな。
ちらりと見てみるともう絵本はダンボールに奥にしまいこんでいて、今からまた取り出すわけにもいかない。はあ。まあいいや。
ダンボールをしめて上からテープを貼る。

どうせロクな事にはなっていない。
私は口に出したりしない。これまでもそうだった。これからもそう。
黙って澪の側にいる。理髪屋だってそうすれば良かったんだ。
王様の耳がロバだろうがなんだろうが気にせず、ただ髪を切っていれば良かったんだ。
「ほい。こっちは片付いたよ」
「ありがと。こっちもこれでいいかな」
「あー、お腹減ってきた、澪ー」
「はいはい。もうちょっと待って」
二人でいるこの部屋の中は現実で童話の世界じゃない。


ねえ、耳がロバの王様。
私は言わないよ。誰にも言わない。
ねえ、裸の王様。
私は言えないの。どうしても言えない。

ねえ、王様。

本当は言いたくても言えないの。

end

短編「ねえ、王様」を読んで頂きありがとうございました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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